◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 スポーツ撮影では次々と展開が変わる。カメラマンは常に経験をもとに「次の瞬間」をとらえる準備をしている。

「ただ動きを追っていては間に合わない。先を読んでカメラを構えるといい瞬間が撮れるよ」。先輩カメラマンに教わった言葉がいつも頭をよぎる。一瞬の判断が必要で、腕前だけでなくカメラの性能も結果を左右する。数年前、慣れ親しんだ一眼レフからミラーレスに移行した。テクノロジーの進歩で、これまでと違う世界が広がった。

 3月のMLB東京シリーズで、スイングスピードの速いドジャース・大谷翔平の本塁打をセンターから狙った時。一眼レフはシャッターを押した一瞬、ファインダーが暗転するので撮った画像が見えていない。打つ瞬間を予想するしかないため、ほんのわずかなずれでタイミングを逃すこともある。動画を切り取る感覚で撮れるミラーレスは途切れることなくボールの軌道、選手の動きを見ることができるため、大谷の鋭いスイングも確実にとらえることができる。動体視力や判断力が向上したような錯覚にさえ陥る。

 機械的な部分がないので、シャッター音が出ないのも大きな進化だ。

ゴルフでは、アドレスに入ったら打つまで「お静かに」がルールだが、テイクバックの写真が増えたのはミラーレスの無音撮影のおかげ。被写体に意識させずにシャッターを切れるようになり、写真の可能性を広げた。

 常に先を予測する先輩の教えは、いつになっても変わらず、ありがたい。一方でミラーレスカメラは撮影者の直感や判断を高いレベルで実現してくれる。頼もしい相棒だ。(写真担当・中島 傑)

 ◆中島 傑(なかじま・たける)2010年入社、16年リオ五輪や巨人、MLBを取材。

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