◆東京六大学野球春季リーグ戦最終週第2日▽早大6―5慶大(1日・神宮)

 3連覇を狙う早大が慶大に連勝し、9勝4敗の勝ち点4とした。1点リードの9回途中、前日(5月31日)先発した今秋ドラフト候補のエース右腕・伊藤樹(4年)が救援し、逃げ切った。

早大は明大と勝ち点&勝率で並び、昨秋に続き早明による優勝決定戦(3日午後1時・神宮)が行われる。創設100周年の東京六大学野球リーグで2季連続の優勝決定戦は、1939年の早慶戦以来、86年ぶり2度目となった。

 一球入魂―。伊藤樹の集中力は最高潮に達した。リードは1点。9回2死満塁のピンチ。左の好打者・横地広大へ全球スプリットで勝負した。カウント2―2からの5球目、力のない飛球が一塁手のグラブに収まる。試合終了だ。2万9000人の歓声とため息をBGMに、笑顔で整列に加わった。

 「絶対にエースが抑えないといけない場面。何とか抑えられて良かった」

 前日の1回戦は8回2失点で勝利投手に。

雨の中、126球を投げた疲労は隠せなかったが、ブルペンで待機した。3回を終え4点リードも、慶大に追いつかれた。早大が8回に1点を勝ち越し、9回2死一、三塁で出番が来た。死球で満塁となったが、0で締めた。「これだけ満員の中で野球をさせていただくことに感謝しかないし、幸せなこと」と笑った。

 これも運命か。天皇杯の行方は2季連続で早明による優勝決定戦に委ねられた。伊藤樹は昨秋の優勝決定戦で宗山(現楽天)を無安打に封じるなど、3安打完封。だが、慢心は一切ない。「そんなにうまくはいかない。何とか勝てるようにゲームをつくって、試合を終わらせるのが仕事」と意気込んだ。

 全ては明大2回戦、リーグ史上初のサヨナラ達成となるノーヒットノーランから始まった。

あの日から先発、抑え、先発、抑えと4連投。4連勝に導いた。小宮山悟監督(59)も「明大2回戦から『怒濤(どとう)の5連勝』を掲げ、ここまで来た。怒濤の5連投で5連勝。流行語大賞、狙っています!」と3連覇へ意気揚々だ。

 「勝てるように頑張りたい」とエース。一球一球に魂を込め、紫紺の軍団に立ち向かう。(加藤 弘士)

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