◆日本生命セ・パ交流戦 2025 巨人5―0楽天(8日・東京ドーム)

 こん身のラストボールだった。描いた通りの球筋に、戸郷翔征投手(25)は「完璧」とうなずいた。

フルカウントから岸田のサインに首を振って外角147キロの直球を選択。代打・阿部に手を出させず、今季最多8つ目の三振を奪った。7回3安打0封。「三振を取れてこそ僕。今年一番。いつぶり…ぐらいに無失点で終われた」と昨年9月以来の0封で2勝目を手にし、お立ち台で胸を張った。

 最速150キロと威力を見せると、伝家の宝刀・フォークにもキレが戻った。4回2死から回をまたいで3者連続三振を奪うなど、直球の軌道から鋭く落としたフォークで計4K。「『これだな』と。フォークが本当にいいところに落ちた。久しぶりに自信を持って投げられた」と22、24年のリーグ奪三振王が本領を発揮した。

 試合前まで8登板で1試合平均3K。

転機は「3日前」だった。自宅で投球映像を見ていると「ふと、去年投げていたフォークの感覚を思い出して」。握る際の絶妙な力加減がよみがえった。「落としたい、三振を取りたい」。今季はその欲が過剰な力みにつながっていた。長打ゼロ、被安打3と楽天打線を圧倒。阿部監督も捕手の岸田も「完璧でした」と声をそろえる出来だった。

 ミスターに、復活劇を見せたかった。昨年の開幕戦。長嶋さんに声をかけてもらった。「勝つよ。頑張って」。

誰より勝利を願う熱い魂を、確かに受け取った。9勝とブレイクしたプロ2年目には「巨人を支えてほしいと願っている」と近未来のエースとして期待された。「勝つことが一番。見せられてよかった」。昨年5月の「長嶋茂雄DAY」に続き、特別な一戦でまた「勝利投手・戸郷」のアナウンスを東京Dに響かせた。

 躍動して打者に向かっていく本来のフォームも取り戻し「ジャイアンツの力はこんなもんじゃない。まだまだやったりたい」とエース。今季最多の119球に、大逆襲へ向けた手応えがにじんだ。(堀内 啓太)

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