◆プロボクシング バンタム級10回戦 〇那須川天心(判定3―0)ビクトル・サンティリャン●(6月8日、東京・有明コロシアム)

 那須川天心(26)=帝拳=が世界前哨戦を大差の判定勝ちでクリア。11月に計画するバンタム級での世界初挑戦に前進した。

(観衆1万2000)

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 世界挑戦への、最終関門を突破した。天心が「四天王」と呼ぶバンタム級の日本人世界王者4人が集結したリングで、世界前哨戦をクリア。「どこに挑戦というのはないが、すごいところに足を踏み入れているなというのは改めて思う。僕は全員と戦って、全部のベルトを狙うつもりでいます」。4本のベルト全てを標的に定めることを宣言した。

 アマチュア200勝の戦績を誇る世界ランク6位の難敵を圧倒した。5回、右ジャブから左ストレートをボディーにつないでぐらつかせた。6回には「ああいうことをやることによって幅が広がるのかなと思った」と“カエル跳びアッパー”を繰り出し、会場を沸かせた。9回には左クロスで何度も膝を揺らし、最終回は左右フックを振り回すサンティリャンと気持ちのこもった打ち合いを見せた。

 ジャッジ1者がフルマーク、残る2者も99―91の大差をつける完勝だが「やっぱり倒して勝てるのが理想的」とKO決着へのこだわりを吐露。「もう一個先の景色を見たい。そこを狙って練習してきたが、もう一歩詰められなかった」と反省の言葉が口をついた。

 「那須川天心である以上、求められるものも大きい」との自負がある。「本当にすべてかけて自分がどうなってもいいくらい、生半可な気持ちじゃないぞというところを見せないと勝てない。そこにしっかり向き合って、一歩一歩進んでいくしかない」。前哨戦のテーマに掲げた「宿命」を燃やして切り開いた道の先に待つ世界王座へ、さらなる進化をもくろむ。

 11月にも、世界初挑戦の舞台が計画されている。「もっと自分を破壊するしかないと思う。毎日『これでいいんだ』じゃなく『もっともっと』みたいな。ロックな男になります!」。群雄割拠のバンタム級のベルト争奪戦に、天心がいよいよ殴り込みをかける。(勝田 成紀)

「顔もぐじゃぐじゃに」

◆天心に聞く ―最終回は打ち合ったが倒しきれなかった。

 「普通の7戦目なら満足してもらえるが、そうもいかない。強いチャンピオンがたくさんいるし、そういう選手と戦っていかないといけないので」

 ―左目尻のガーゼは。

 「バッティングです。2か所切れちゃった。もう、慣れっこ。キックの時はなかった。眉毛もラインが入っちゃって、ギザギザになっちゃって、顔もぐじゃぐじゃになっちゃった」

 ―世界前哨戦をクリア。

 「もう、やるしかないので。世界というものをもう一度見つめ直して、真摯(しんし)に向き合っていきたい」

 ―今後の課題は。

 「いっぱいあるが、これが自分の実力。ちょっと後ろに下がったりとかもあると思うが、一歩一歩、日々をしっかり生きていけたら」

 ◆那須川 天心(なすかわ・てんしん)1998年8月18日、千葉・松戸市生まれ。26歳。キック42戦全勝(28KO)、総合格闘技4戦全勝、キック・総合ミックスルール1戦1勝の格闘技47戦全勝でプロボクシングに転向し23年4月にデビュー。身長165センチの左ボクサーファイター。

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