◆米大リーグ ドジャース11―5ジャイアンツ(14日、米カリフォルニア州ロサンゼルス=ドジャースタジアム)

 ドジャース・大谷翔平投手(30)が14日(日本時間15日)、本拠地・ジャイアンツ戦に「1番・DH」で出場し、24、25号と2本塁打を放ち、日本人初のメジャー通算250号を達成した。ド軍移籍後最長の10戦、46打席本塁打なしと当たりが止まっていたが復調。

試合後には3日に89歳で亡くなった長嶋茂雄さんの“ミスター魂”を継承することを誓った。

 久々の快音にロサンゼルスのファンが沸いた。大谷は初回、ド軍移籍後最長ブランクとなる11戦、47打席ぶりの24号先頭弾を右中間にたたき込むと、4打席目には今季3度目の1試合2発となる25号ソロだ。日本人初のメジャー通算250号。負ければ首位陥落の一戦でチームを大勝に導き「だいぶ長いこと打っていないなと思っていたので、2本とも比較的いいホームラン。1本目は先制するという意味では大きい1本だった」とうなずいた。

 2日(日本時間3日)の本拠地・メッツ戦で23号を放ってから長いトンネルが続いた。安打は出ても角度がつかずにフェンスを越えることはなく、復調へ向けて原点回帰。「比較的構えが大事だと思っているので、そこを重点的に試合前はチェックして入りました」。以前から最重要視する構えを見直して、復調の兆しが見えた右中間への2発だった。

 新たな思いを胸に打席に入っている。3日に長嶋茂雄さんが死去。

大谷は16年12月のスポーツ報知の対談で初対面し、今年3月15日の巨人戦前にも対面した。これがミスターが公の場に登場した最後となった。亡くなった日にインスタグラムで「心よりご冥福をお祈りいたします」とコメントを添えて追悼したが、自らの口では初めて思いを語った。

 「リアルタイムで(現役時代を)見ている世代ではないので、プレーをお目にかかることはなかったですけど、実際にお会いしてみて、素晴らしい人でしたし、会話をしていても、やっぱりすごく野球に対する愛情が深い方なのかなという印象を受けた。非常に残念なニュースでしたけど、その情熱を現役の僕らが次の世代につないでいければいいんじゃないかなと思っています」

 たびたび会って話した内容は決まって野球のこと。刺激的なひとときだった。2人は誰もが認めるスーパースター。大谷はかつて長嶋さんからこんな言葉を託されていた。「最高の力を持っている人がスーパースターだけど、それは人が言うもの。やっぱりファンあってのプロ野球。まずファンを大切にする気持ちが必要。それがスーパースターに近づいていくんじゃないかな」。

大谷は特大の本塁打でファンを沸かせ、「2つ同時にやっていくのが通常のスタイル」と、二刀流という前代未聞の道を進み、ミスター魂を継承していく。

 野球人口減少には大谷も危機感をたびたび口にしてきた。小学校にグラブを配布し、厳しい日程の中でWBCにも出場した。すべては野球の振興、発展のため。長嶋さんと思いは一緒だ。「どんどん次の世代に託していけばいいんじゃないかなと思います」と繰り返した大谷。2回、スミスの犠飛で生還し、本塁にスライディングした場面。バランスを崩して転がったお茶目なところもどこかミスターと重なった。(安藤 宏太)

ミスター対談で活躍“予言”

 ◆長嶋さんと大谷の対談での主なやり取り

 ▽打撃 長嶋さんは大谷の打撃について「いつもテレビで見てますが、ほとんど体が前に出ない。何も言うことはないね。もし、米国で打撃を披露したら、ビックリするよ」。大谷から打席での心構えなどを質問され「初球から打つ。

1ボールからも打ちにいく。2ボールだったら打たないかな…。2―1、3―1の時は勝負。そのカウントでは、その投手が一番いい球を投げてくる。それを必ず打つ」

 ▽170キロ指令 大谷が「いずれは(世界最速を)出してみたい」と話すと、間髪を入れずに長嶋さんが「出してみたいではなく、出すんだよ。精神力をもっともっと強く持ってやれば、その気持ちは(力となって)出ますから」。

 ▽世界一 長嶋さんは世界一の選手を聞かれ「ジョー・ディマジオかな。野球だけではなく、人間としてもいい」。大谷は「まだ(世界一の選手とは)明確にはないです。野球のスキルだけではないと思う。人間性も含めて、『この人すごかった』と最終的に言ってもらえるように頑張りたいです」

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