◆パ・リーグ 西武1―2日本ハム(29日・ベルーナドーム)

 未知の領域についに達した。9回を投げ切って受けたヒーローインタビュー。

プロ初の完投勝利で5勝目を挙げた日本ハム・達孝太投手(21)は、涼しい顔で「完投する気満々でした」と言ってのけた。

 27日の同球場で、西武・今井が熱中症のため4回途中で降板。その姿に新庄監督は「この球場では完投はなし」と話していたが、達は「そう言っていたので、やってやりました」とニヤリ。“背信の完投”によるデビューからの6連勝は大谷(現ドジャース)を抜いて球団記録にあと1に迫り、オール先発ではプロ野球史上初の快挙となった。ビッグボスも「言うことを聞かない子だねぇ(笑)。ルール違反の完投。よく投げ切りました。もしかしたら暑さに強い子かもしれないね」と、さすがに褒めるしかなかった。

 試合開始の午後2時の気温は34度。湿った空気がフィールドに充満していたが、「メチャクチャ暑くはなかったですね」。端正なマスクをゆがめることなく打者に対した。こまめに水分を補い、アンダーシャツを5回着替えるなど暑さ対策は万全。

194センチの長身を生かして真上から投げ下ろす150キロ超の速球、フォークで相手打線を翻弄(ほんろう)。2回、ネビンに左越えソロを浴びたが、3回以降はネビンに許した単打3本に抑えた。自己最多タイの8奪三振にも「イニングの数は取りたいと思っているので、ちょっと物足りなかった」と唇をとがらせた。

 チームはリーグ戦再開最初の3連戦を2勝1敗で勝ち越し、貯金を今季最多タイの14に戻した。この日の達でチームは15完投とし、目標の「31完投」へ折り返し目前だ。8勝の伊藤に次ぐチーム2位の5勝で、中心投手になりつつある。新人王の資格も持つ右腕は“大谷超え”にも「あまり意識していないですけど、この記録を伸ばしていけたらいいと思っています。次はしっかり完封したいですね」。4年目の右腕は、新境地へと達していく。(秋本 正己)

 ◆記録メモ

 達(日)が西武戦で4安打1失点の完投で今季5勝目。22年のデビューから6連勝とし、13、14年で5連勝した大谷翔平を抜いた。初登板から勝敗のつかなかった試合を含め、全て先発で6連勝はプロ野球初。

球団の生え抜きがデビューから6連勝以上は7連勝した松浦宏明(86、87年)、6連勝した尾崎行雄(62年)、内山正博(90、91年)、武田久(03~06年)に次いで5人目。

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