◆JERA セ・リーグ 巨人1―0DeNA(29日・東京ドーム)

 巨人がDeNAに競り勝って、20年8月の阪神戦(東京D)以来となる同一カード3連続完封勝利を達成した。中山礼都内野手(23)がプロ初アーチのソロを右翼席にたたき込み、その1点を4投手の継投で守り抜いた。

先発・赤星優志投手(25)は7回途中無失点の力投で自己最多の6勝目。最終回を締め26セーブ目を挙げたR・マルティネス投手(28)は、開幕から31試合連続無失点のセ・リーグタイ記録を樹立した。貯金を2とし、7月1日から3・5ゲーム差で追う首位・阪神3連戦(甲子園)に臨む。

 右手人さし指を誇らしげに突き上げた。フェンスオーバーを確認すると、中山はきゅっと唇に力を込めて、喜びをかみしめた。「最高に気持ち良かった。5年目で初ホームランだったので、やっと打てたな、と」。昨年10月20日のCS最終ステージのDeNA戦(東京D)で決勝弾を放っていたが、レギュラーシーズンでは初のアーチ。通算453打席目、節目の100安打目が待望のプロ1号、決勝ソロとなった。注がれる歓声と両手に残る最高の感触は格別だった。

 迷いはなかった。両チーム無得点の2回先頭。

「思い切っていこう」。2ボールからジャクソンの真ん中高め150キロ直球を打ち砕いた。右翼手の高橋由伸やイチローのような選手へ成長してほしいという願いを込めて「礼都(らいと)」と名付けられた若武者が、ライトスタンド中段に放り込んだ。入団から約9キロ増の体重89キロの進化した肉体から放たれた強烈な一発だった。2軍監督時代から見守る阿部監督は「強い球を打てたので自信にしてほしい。スイングする力が1年目と全く違う。ここまで人ってなるんだな」と感慨深げに目を見張った。

 「アピールポイントは打撃」と語る礎は父・慎也さんとの練習にある。同じ左打者の阿部監督の打撃を参考にしながら、幼少から父や祖父・義治さんと自宅の庭で毎日ティー打撃。「家に帰ったらまずおじいちゃんと絶対にやる。お父さんが夜に帰ってきたらまたやる。間違いなく今にも生きている」。

オフの自主トレも地元・愛知で父に手伝ってもらいながら行った。「小さい時から見ているので、いろいろと分かってくれて力になる」。感謝の記念球は実家に届けるつもりだ。

 自立した日々を過ごし、たくましくなっている。昨オフに退寮し、人生初の一人暮らしを始めた。「料理は難しいです」と苦戦しながらもオムライスやチャーハンを作るなど自炊に挑戦。部屋の掃除や洗濯も常に行っている。「部屋をきれいにした方がいい結果が出ると思っているタイプ。門限はないですけど、飲みに行ったりもしないです」。チーム屈指の練習量を誇る男は、結果を残すためにストイックな自己管理生活を送る。

 チームは3連勝を飾った。本職は内野ながら、今季から出場機会を増やすために外野にも挑戦し、3試合連続で左翼で先発し、貢献。

「ポジションのこだわりはないので、出たところで役割を全うしたい」。レギュラー奪取へこの好機を逃さない。鳴りやまない「礼都」コールをかみしめる中山の笑顔が輝いた。(宮内 孝太)

 ◆堀内恒夫Point

 2ボールからストライクを取りにきた、真ん中高めの真っすぐ。ジャクソンの失投ではあるけれど、その球を1、2、3のタイミングで思いきりスイングして公式戦初アーチにした中山を褒めてあげたいね。2、3打席目もいい当たりながら、スタンドまでは届かなかった。つまりミートはうまいが、長打力不足。これが中山の評価だったが、ホームランは若い選手には良薬になる。勘違いしてブンブン振り回すことさえなければ、この一打をきっかけにして、長打も増えていくかもね。

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