サッカーJ3のFC大阪が、東大阪市(野田義和市長)と協定をかわす花園ラグビー場第2グラウンド(G)改修計画は2019年11月の提案後、実行されないままだ。本拠撤退危機も浮上したが今夏、新たな動きがあった。

ラグビー場を所有する市が6月、クラブから再提出された28年3月までに完成させる計画案に実現性があるとして、クラブがJリーグにJ2ライセンス申請書類を提出した際、ホームスタジアム所有者として署名。FC大阪は第2G改修中、引き続き第1Gを使用できる見通しだ。工事は今度こそ行われるのか。元所属選手でもあるFC大阪・近藤祐輔社長(38)に聞いた。(取材・構成=森口登生、田村龍一)

 ―第2Gを改修して市に寄付すると19年11月に掲げた計画は、コロナ禍や物価高騰などで頓挫。24年12月に市と再協定を結び今夏、J2ライセンス申請書類に市側の署名も得た。

 「東大阪市をはじめ、多くの方々のご協力があってのこと。大変ありがたく思っています。器(ホームスタジアム)としてJ2に行ける準備ができて、うれしく思っています」

 ―老朽化する第2Gで約1500ある観客席を約5000に増やし、電光掲示板も建設する。総工費約15億円。

 「新設ではなく改修。老朽化しているところを変えるイメージです。

費用は我々が最低限できる捻出を計画として提出しており、税金には頼りません」

 ―来季からJリーグは8月~翌年5月の秋春制に移行し、ラグビー・リーグワン2部・花園近鉄ライナーズの試合と日程が重なるが、共存できるのか。

 「共に上(のリーグ)を目指せるように、やっています。来季からシーズンが変わってラグビーと日程が、かぶると思われがちですが、スケジュールで言うと、そこまでではないんです。Jリーグはウィンターブレイクがありますし、基本的には、かぶらないように進められると思います」

 ―Jリーグ(J3)参入3シーズン目で現在、J2自動昇格圏内の2位。クラブが第2G改修計画に取り組むのと並行して、チームもJ2昇格に突き進む。

 「チームは、やるべきことが明確化され、しっかり走れています。夏場に疲労と強度のバランスを取れれば、いい状態をキープできると思います。『全ては勝利と感動のために』と掲げており、確固たるものがブレなければ、崩れはしないと考えています」

 ―28年3月末までに工事が終了しても、第2Gは収容5000人とJ3規格。基本的にJ1は収容1万5000人以上、J2は同1万人以上がスタジアム基準とされ、上のカテゴリーで戦うためには、新たな計画を練っていく必要がある。

 「工事後のことは当然考えていますし、やっていかなければいけないことも多々あります。ただ、今にフォーカスしないと未来もありません。我々としては、期日までに工事を完成させることにコミットメントしています。

J2、J1に向けて、心配してくださる方や気になるという方がおられるのも当然、分かっておりますが、まず責務を果たすことと考えています」

 

〇…東大阪市の担当者は、来秋から着工予定の第2G改修について「スケジュール通り工事ができているか、概ね2週間に1回ほど話し合いの場を設ける」とFC大阪と情報共有する姿勢。年末年始の全国高校ラグビーでは基本的に第1~3Gまで全グラウンドを使う予定とし、FC大阪のホームスタジアムに関しては「第2G(改修)ができるまでは第1Gで」とクラブ側と確認したという。改修、寄付後もFC大阪は第2Gをホームスタジアムとして使用する。屋根がないなど、Jリーグのスタジアム基準に達しない部分もあるが、その点は「FC大阪とJリーグの話。市は管轄外」とした。

 【記者の目】

 今回の近藤社長のインタビューでは、何よりも未着工の第2G改修を28年3月までに完了させるという熱量は伝わってきた。改修案を練り直し、東大阪市との再協定に向き合っていくという誠意が認められた結果が、J2ライセンス申請書類への市の署名だろう。

 一方、より上のカテゴリーで戦っていくための課題も残る。昨年12月の再協定締結の会見時、近藤社長が改修後の第2Gについて「Jリーグ仕様のものではない」とした。実際、収容人員数や屋根の問題などJ2、J1の基準を満たすものではないが、まずは市との“約束”を最優先事項とする。

 Jリーグから特例と認定されるにも、今回の工事終了とほぼ同時に、新たにスタジアムについての具体的計画がまたしても必要になるだろう。決して、現在取り組む改修工事の遂行がゴールラインではない。

(サッカー担当・森口 登生)

 ◆FC大阪 1996年創設。大阪府リーグ、関西リーグから昇格し2015年からJFL参戦。21年、J3クラブライセンス取得。22年、J3昇格を決め、G大阪、C大阪に次ぐ大阪府下3番目のJクラブとなる。J3戦績は23年が11位、大嶽直人監督が就任した昨季は6位(J2昇格プレーオフで敗退)。ホームタウンは東大阪市。

 ◇花園ラグビー場第2G改修問題の経過

 ▽19年11月 FC大阪が第2Gを収容約5000人規模に改修し、市へ寄付することを提案

 ▽20年6月 市議会本会議でラグビー場など「東大阪市花園中央公園エリア」の指定管理者をFC大阪など「東大阪花園活性化マネジメント共同体」と可決。管理期間は40年3月まで

 ▽21年2月 第2G改修案の中心人物だったFC大阪・疋田晴巳社長(享年60)が病気のため急逝。近藤副社長が新社長就任

 ▽24年12月 FC大阪が28年3月末までに第2G改修を終えるとする再協定を市と結ぶ。野田市長は「(終えなければ)ホームタウンとしての継続をする気はない」と明言

 ▽25年6月 市がFC大阪の改修案を受け入れ、J2ライセンス申請書類に署名

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