◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 世界水泳(シンガポール)は、日本水泳にとってブレイクスルーのきっかけとなるかもしれない。海などで泳ぐオープンウォーター(OWS)の女子2種目で、21歳の梶本一花(枚方SS)がメダルを獲得。

OWSでは日本勢初の表彰台となった。注目すべきは、競泳との“二刀流”スイマーだということだ。

 OWSと競泳の両立は今でこそ珍しくないが、私が小学生だった20年前は、海に遊びに行けばコーチに叱られた。プールと海では塩分濃度など水質が異なる。明確な根拠を聞いた記憶はないが、感覚が狂ったりフォームが崩れるから「海では泳ぐな」と言われていた。

 梶本を指導する太田伸コーチは「OWSでは脈(拍)を下げたままゆっくり長く泳ぐ。そこが必要になる」と言う。約2時間泳ぎっぱなしの10キロのレースに備え、プールで1000メートル×5本など、長く泳ぐための技術、体力、精神を磨く。1500メートルは約15分の戦い。競泳では一番長い種目だが、2時間泳いだ後なら楽に感じられるかもしれない。いずれにせよ、OWSが強化につながるという。

 12年ロンドン五輪、チュニジアのメルーリが男子1500メートル自由形とOWSの10キロで表彰台に立ち「こんな選手がいるんだ」と驚いた。

日本でもOWSの男子で16年リオ五輪8位の平井康翔氏、女子で21年東京大会まで3大会連続五輪出場の貴田裕美氏がパイオニア的存在だろう。世界が先立ち、日本でも両立する選手が出てきた。

 3月に男子1500メートルで日本記録を更新した18歳の今福和志も、梶本と同門でOWSをこなす。過去の常識にとらわれない挑戦が、28年ロス五輪で実を結ぶことを期待している。(競泳担当・大谷翔太)

 ◆大谷 翔太(おおたに・しょうた) 2018年入社。大相撲を経て五輪・ラグビー担当。24年パリ五輪などを取材。

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