8月1日の金曜ロードショー(後9時)は、「バケモノの子」、「竜とそばかすの姫」などで知られる細田守監督の”出世作”ともいえる「サマーウォーズ」(2009年)が放送される。同作は、ちょうど16年前の放送日である1日に公開。

当日は現在のように金曜公開が一般的ではなく、計算しなくても同日が土曜日だったとすぐに分かる(何を言っているのか「?」な人は、放送をお楽しみに)。

 物語は、インターネット上の仮想世界「OZ(オズ)」の中で、誰もが生活の多くを行うようになっていた世界。高校の物理部に所属し、OZの保守を担当していた健二はある日、あこがれの先輩である夏希からアルバイトを持ちかけられる。喜び勇んで向かった先は、夏希の田舎である長野県上田市。実家の陣内家は、地元で戦国時代から続く名家だった。

 現地に到着し、アルバイトの内容が実家の”主”である曽祖母・栄の前で夏希のフィアンセを演じることと知った健二。何とか栄の信頼を得たが、翌日にOZのセキュリティーが破られて暴走したことをきっかけに、健二と夏希のウソは一族にバレてしまう。さらに健二は、OZの暴走の犯人と疑われることに。実家が大騒動となる中、新たな事実が判明し、思いもよらなかったことも起きて―。

 前回、金ローで本作が放送されたのは21年7月。このコラムを始めた直後だった。その時にも「改めて作品を見て感じたことは、細田監督の先見性だ」と書いたのだが、当時から4年が経過して、その思いを一層強くした。

 この4年間で、デジタルの世界で何が最も変化したかといったら、AIの進化だろう。「AI」の言葉は作品内にも出てくるが、公開時に本作を見た時、記者は正直「何のこっちゃ」だったし、4年前に見た時もそこまでピンと来ていなかった。

 だが、チャットGPTをはじめとしたAIが、誰でも当たり前のように使えるようになった現在、本作の中の出来事を「もしかしたら起きてしまうかも…」と身近に感じる人は多いのではないだろうか。その表現を、どんな進化をしていくのか分からない16年前にエンターテインメントとして、しかもリアリティーをもって描いていたことに改めて驚かされた。

 ところで、1日は公開日であると同時に、物語のキーパーソンでもある栄の誕生日でもある。そんな「『サマーウォーズ』の日」に本作が放送されるというのは、まさに「運命」と言えるのではないか。ちなみに、前回8月1日が金曜だったのは14年(その時、金ローで放送されたのは「るろうに剣心」でした)。次に金曜となるのは6年後の31年だ。(高柳 哲人)

編集部おすすめ