俳優の鈴木亮平(42)が公開中の主演映画「TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション」(松木彩監督)で救急救命医の喜多見幸太を好演している。2021年にTBS系ドラマとして始まった人気シリーズ劇場版第2弾。

「手術シーンはアクション」という松木監督の意向を踏まえて「時代劇の殺陣を意識してダイナミックに見せることを心掛けました」と語る。刀を手にした侍のように華麗にメスを操る鈴木に注目だ。(有野 博幸)

 熱い心と冷静な頭脳。鈴木演じる救急救命医の喜多見を見ていると、そんな言葉が頭に浮かぶ。「ドラマから4年。熱さと冷静さはずっと意識しています。実際の年数とリンクしているので、喜多見も成長していて、どっしり幹が太くなっています」と胸を張った。

 火山が噴火した南の島で患者の命を救うため、1分1秒を争う極限状態。喜多見は冷静沈着に状況を判断し、患者に寄り添う。「医療用語は難しいし、手術の技術も求められる。『TOKYO MER』恒例の試練ですね。緊迫感を観客の皆さんにも伝えたいと思っています」。

一般的な医療ドラマの手術シーンは執刀医にスポットライトが集中するが、今作では全員が必死に動き回る。執刀しながら、周囲に指示を送る喜多見のリーダーシップ、仲間たちのチームワークも見どころだ。

 映画の冒頭では鍛え上げられた胸筋を披露する。「肉体を見せるのは、インパクトだけじゃないんです。喜多見は体力があって、超人的な動きで人を救う。それに説得力を与える意味があるんです。『この人なら、どんな状況でも助けてくれそう』と思ってもらえるように」。日頃から筋トレが好きでジムに通っているが、撮影前の半年ほどは、さらに集中し美しい肉体を仕上げた。

 松木監督から「手術シーンはアクション」と言われ、表現方法を模索した。「時代劇の殺陣と同じようにダイナミックに見せる工夫をしました。殺陣は実際の武道とは違って、刀をどう魅力的に見せるか、侍が強そうに見せるか、ということが大事。手術シーンでは、いろんな角度から患部をのぞき込んだり、メスを顔の近くに持って来たり。

そこにも注目してほしいです」

 鹿児島や沖縄を拠点とする医師で南海MERのチーフドクター候補・牧志秀実を演じた江口洋介(57)とは初共演。「僕が青春時代に見ていたドラマに出られていて、世代ど真ん中の先輩です。いつも自然体で少年の心を持っていらっしゃる」。沖縄ロケでは江口ら共演者、スタッフと居酒屋で食事をしたことも。「お酒を飲みながら、沖縄で有名な魚のスギ(別名・黒かんぱち)をおいしくいただきました」

 シリーズを重ねることで「TOKYO MER」への愛着が増している。「僕にとって特別な作品であることは間違いないですね。ただ、これまでの作品で3本の指に入るくらい、体力的にきつい。精神的に追い詰められるし、血が出るシーンもたくさんある。それでも、全員が人を救うということに一点集中なので、人間の美しい部分を描いている。そこが好きですね」と募る思いを明かした。

 さらなるシリーズ化も期待される。「みんなが愛してくだされば、可能かもしれませんね」。

ふと、思いを巡らせて「おじいちゃんになっても、できるかな。農業でもしながら、余生を過ごしているところに出動要請が来たら、面白いな。省エネ版の喜多見もいいけど、やっぱり喜多見は何か起きれば、すぐに『行きます!』と出動するんだろうな。すみません。勝手に妄想しました」と無邪気に笑う。

 俳優として時代劇からコメディーまで役柄の幅が広く、難役であればあるほど闘争心に火が付く性分。前向きな姿勢は、未曽有の災害に立ち向かう喜多見に重なる。

 ◆「TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション」 「TOKYO MER」の活躍が評価され、鹿児島と沖縄の海に浮かぶ島々を巡る「南海MER」が誕生した。指導スタッフとして「TOKYO MER」の喜多見チーフ(鈴木)と看護師の蔵前(菜々緒)が派遣され、「南海MER」の試験運用がスタートした。ある日、鹿児島・諏訪之瀬島で噴火が発生。全島民79人の命を救うため、喜多見が史上最大のミッションに挑む。115分。

◆鈴木 亮平(すずき・りょうへい)1983年3月29日、兵庫県生まれ。42歳。東京外語大入学を機に上京。2006年にテレビ朝日系ドラマ「レガッタ」で俳優デビュー。07年に「椿三十郎」で映画デビュー。18年にNHK大河ドラマ「西郷どん」、24年にNetflix映画「シティーハンター」、25年に映画「花まんま」に主演。英検1級、世界遺産検定1級。身長186センチ。

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