◆アイム・スティル・ヒア (ウォルター・サレス監督、8日公開)
日本では「国宝」の快進撃が話題を集めているが、ブラジルでも一本の映画が社会現象を巻き起こしている。
「アイム・スティル・ヒア」は、1970年、軍事独裁政権に連行され、消息を絶った元国会議員のルーベンス・パイヴァと、5人の子供を育てながら夫の行方を追い続けた妻・エウニセの実話に基づく物語。
ブラジルは85年に民主化したが、「ブラジルのトランプ」とも呼ばれたボルソナロ前大統領のような極右政治家が再び台頭している。サレス監督は「軍政期の記憶がいかに脆(もろ)く、消されやすいものであるか。結果的に過去だけでなく、現代における新たな権威主義の危険性をも照射する作品となりました。それが、私たちが今いる現実です」と話す。終戦から80年を迎えようとしている日本でも、この映画が公開される意味は大きいと思う。