金曜ロードショー(後9時)では、戦後80年の節目ということで2週続けて戦争に関する映画を放送。8日は女優・福原遥と俳優・水上恒司がダブル主演した「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」(2023年)が、枠を35分拡大して地上波初放送される。
高校生の百合(福原)は、進路を巡って女手一つで育ててくれた母・幸恵(中嶋朋子)とケンカになり、家を飛び出して近所の防空壕(ごう)跡に逃げ込む。いつの間にか眠ってしまった百合だったが、目を覚ますと1945年6月にタイムスリップしていた。
戸惑いを隠せずに街に出た百合を助けてくれた軍人の彰(水上)は、軍の指定食堂を営むツル(松坂慶子)を紹介する。2人をはじめ、周囲の人々に助けられて街になじんでいくにつれて、彰にひかれ始める百合。だが、彰には特攻隊員として戦地に向けて飛び立つ運命が待ち構えていた―。
日本人であれば、「特攻」の運命がどうなるのかは、ほとんどの人が知っている。当然ながら、結末は決して明るいものではない。だが本作は、ネタバレになってしまうので詳細は避けるが、福原演じる百合には前向きな未来が待っている。同時に、具体的なセリフはないものの、母と自分を残して死んだ父への「許し」も描かれている。その”光”が存在する点が、本作が若い観客にも受け入れられ、大ヒットした要因だったのではないだろうかと考えている。
ところで、特攻隊をテーマにした作品は小説からドラマ、漫画、歌に至るまで古くから数多く製作されている。もちろん、映画も多数が公開。有名なところでは、岡田准一が特攻隊員を演じた「永遠の0」(13年)、特攻隊員の生き残りを描いた高倉健さんの「ホタル」(01年)あたりか。やや”変化球”になってしまうが、「ゴジラ―1・0」(23年)や、宮崎駿監督の「風立ちぬ」(13年)も、広い意味では「特攻隊の映画」と言ってもいいだろう。
そんな中で、本作と同様に「特攻×タイムスリップ」として作られたのが「WINDS OF GOD」(1995年)。大腸がんのため、2015年に54歳の若さで亡くなった元自衛隊員の俳優・今井雅之さんがライフワークとしていた作品だ。
売れないお笑いコンビの誠と金太は、ある日交通事故に遭遇。気が付くと2人は終戦間際の特攻隊基地で、出撃を待つ特攻隊員に体が入れ替わっていた―という設定。最初は舞台として発表され、後に映画となった。本作とは毛色が違うが、ぜひ見比べてほしい。そういえば、同年に公開された「きけ、わだつみの声 Last Friends」(主演・織田裕二)もタイムスリップものでしたね…。(高柳 哲人)