試合後に開頭手術を受けたボクサー2人の死去を受け、試合を管理、運営する日本ボクシングコミッション(JBC)と日本プロボクシング協会(JPBA)が12日、都内で再発防止策を協議し、医療体制を一層充実させる方針を決めた。過度な減量を抑制するための転級命令や尿比重検査、全興行での救急車待機など、安全対策を導入していく。

 2日の東京・後楽園ホールの興行での試合後に緊急搬送された神足茂利さん(享年28、M・T)が8日に、浦川大将さん(享年28、帝拳)は9日に死去。相次ぐリング禍の防止に、JPBAのセレス小林会長(52)は「何が正解か分からないので考え得ることはやらなければいけない。事故をゼロにするような体制を作っていきたい」と沈痛な面持ちで話した。

 主要な議題となったのが、計量数日前に意図的に脱水状態を作り、計量後に急激に体重を戻す「水抜き」など過度な減量への対策だ。前日計量から試合当日まで10%以上増量した選手に対し、これまでも階級変更を勧告していたが、今後は強制力を持って次戦は同階級での試合を認めない意向だ。加えて、脱水状態を調べるためハイドレーションテスト(尿比重検査)、体組成の測定も実施していく。

 また、これまでは世界戦に限定されていた救急車の待機を全興行に拡大。現在は30歳以上に限定されているプロテスト時の頭部MRI(磁気共鳴画像装置)検査も、全受験者に義務づけるなど、具体的な対策が示された。

 今月中にも開かれるJPBAの臨時理事会を経て、速やかにルール整備を進めていく。JBCの安河内剛事務局長(64)は「日本で100年続いてきた競技そのものが存続していけるかの瀬戸際でもある」と危機感を募らせた。

 ◆会合で話し合われたリング禍への主な対策案

 ・試合当日の体重が前日計量から10%以上増量した選手への転級命令

 ・前日計量でのハイドレーションテスト(尿比重検査)導入

 ・前日計量と試合当日の体組成測定実施

 ・プロテスト受験時とJBCが必要と判断した選手の頭部MRI検査

 ・全興行会場での救急車配備(現在は世界戦興行のみ)

 ・WBCが開発したボクサー体調管理アプリ「BoxMed(ボックスメッド)」導入

 ・ジムでのスパーリングの指標作成

 ・アマプロ合同の医事委員会開催

 ・大学の研究機関との提携

 ・海外の事故防止対策の調査

 〇…5月24日のIBF世界ミニマム級タイトルマッチで判定負けし、試合後に急性硬膜下血腫のため開頭手術を受けた前IBF同級王者・重岡銀次朗(25)=ワタナベ=が、6日に大阪市内の病院から故郷の熊本県内の病院に転院したことが分かった。JBCが12日、明らかにした。

重岡は6月下旬に集中治療室(ICU)から一般病棟に移っていたが、現在も意識は回復していないという。

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