「夏の自由研究」は5月に、YouTubeチャンネルを開設した戸崎圭太騎手(45)=美浦・田島厩舎=を取り上げる。今年81勝でリーディングを快走し、ドバイ・シーマクラシックのダノンデサイルで海外G1初勝利を挙げたトップジョッキーはSNSでも注目を集め、初回の動画は約38万回の再生を記録。
全くイメージがなかったぶん、驚かされたのが正直なところだ。JRAのトップジョッキーとしてバリバリに活躍している戸崎騎手が、今年5月に自身のYouTubeチャンネルを開設して話題を集めている。最初の投稿となった「【JRA騎手】戸崎圭太YouTube始めます!」は38万再生回数を記録し、すでにチャンネル登録者数は8万6700人以上(いずれも12日現在)。そこで本人に素朴な疑問からぶつけることにした。
これまでSNSなどで個人的に発信したことはなく、「みんな驚いているでしょうね。まさか俺が!? って」といたずらっぽく笑った。きっかけは、総代表を務める剣道道場「川崎真道館道場」の関係者との何げない話からだったそうだ。自身の子供の影響で始めた剣道で、最初は道場の宣伝などを考えていたところ、ジョッキー・戸崎圭太を取り上げるプランへと話は膨らみ、「僕一人ではできないことなので、皆さんに相談したところ、『やれるんじゃない』といういい流れになったので」と具体的に企画が動き始めたという。
くしくも今春のドバイ・シーマクラシックをダノンデサイルで制し、馬上インタビューで興奮のあまり「ベリーベリーホース」という“迷言”を生み出してファンの話題をさらっていた。動画内で視聴者にチャンネル名を公募したところ、「戸崎圭太のベリベリチャンネル」に決定。本人も反響の大きさに驚きを隠さない。
3回目の動画(7月9日公開)はプロ野球公式戦の始球式に向けて特訓する企画で、元中日のレジェンド投手で競馬通としても有名な山本昌氏がサプライズゲストとして登場。最新の動画(7日公開)では剣道場で練習に励む姿を公開し、ひと味違った素顔で楽しませている。「でも、面白いというより、まだ慣れないですね。なんかこう“素”を出せない、出せてないです。もっと柔らかくやりたいのに、堅くなっている感じはあります。カメラが回っているとかありますし…」。だが、語る表情は新鮮な気持ちで生き生きとしている。
そしてジョッキーとしての自分を見つめ直す機会にもなったと明かす。「デサイルのタイミングというよりは、心の持ちようの余裕というのが出てきているんじゃないですかね。
YouTuberとして意識しているという当面の目標は、記念品の「銀の盾」がもらえる登録者数10万人。本業の方では先週9日に6勝の固め打ちをし、81勝でトップをひた走る。9年ぶり4度目の最多勝利騎手へ「ここまで来たらリーディング取りたいなという気持ちはありますよね。ひとつひとつ丁寧に乗ってきている結果だと思います」。来週にはダノンデサイルでJRA海外馬券発売レースの英インターナショナルS・G1(20日、ヨーク競馬場・芝2050メートル)が控えており、その裏話など今後の動画も期待したくなる。
◆戸崎 圭太(とさき・けいた)1980年7月8日、栃木県生まれ。45歳。98年4月に大井競馬でデビュー。08年に306勝を挙げて初の全国リーディングに輝き、11年の安田記念(リアルインパクト)でJRAのG1初制覇。
本当の一流が本気でやっているからこそ面白い
現役ジョッキーが自らチャンネルを開設して動画配信するのは珍しい。スポーツ新聞の記者として「騎手とYouTuberの二刀流」と話題をつくってくれるのは、うれしいの一言。動画を見てみると、本当の一流が本気でやっているからこそ面白いと感じた。
日頃から取材で誠実に答えてくれる戸崎騎手は、ひたすら真面目に仕事と向き合っている印象だ。「今まで僕も何かやりたいことがあまりなく、趣味もないですからね。そういう意味では、すごくいい機会になりました」と、ふと漏らした言葉は本音だろう。今夏の福島リーディングを獲得した表彰式では「改めましてYouTuberの戸崎圭太です!」と楽しそうにファンの笑いを誘った。