2018、20年優勝で、世界ランキング24位、第23シードの大坂なおみ(フリー)は逆転で敗れ、全米3度目、4大大会5度目の決勝を逃した。過去2戦全敗で同9位、ウィンブルドン準優勝のアマンダ・アニシモバ(米国)に、日またぎの熱戦で7-6、6-7、3-6の2時間56分のフルセットで敗れた。

4大大会準々決勝以降、無敗だった神話が崩れた。

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 大坂の無表情が、すべてを物語っていた。ついに大坂の気持ちに限界が来た。集中し攻守の切り替えを考え、足を動かし、膝を曲げ、丁寧に返球する。フル回転してきた大坂の心身が、準決勝で力尽きた。最後は、アニシモバのフォアが決まり、4大大会の準々決勝以降で初めて敗れた。

 お互いに、心が揺れるメンタルの戦いだった。第1セットは大坂が、第2セットはアニシモバが、接戦の末、タイブレイクで奪った。明暗を分けたのは最終セットの第1ゲームだった。

 大坂は、アニシモバのサーブで、0-30と2点先取した。続くサーブは第2サーブとなり、大坂はバックでリターン。しかし、中途半端な勢いでネット。

ここで、相手が息を吹き返し、先攻を許した。たらればはないが、もしリターンが入り、ポイントを取っていれば0-40。相手のサービスゲームを破る可能性が高いスタートとなり、試合の主導権を握れた。

 大坂にとって怖さとの戦いだった。安定性を重視した新スタイルは、ミスを減らす分、逆にミスすることへの恐怖が生まれる。人は安定を覚えると、リスクを取ることを避け始める。そこに躊躇(ちゅうちょ)が生まれた。

 しかし、大坂の新スタイルは始まったばかりだ。恐怖を乗り越え、集中力を高め、経験を積むことで、安定性を重視したプレーは、磨きがかかる。今回の結果で、決して諦めないことだろう。大坂の新たなテニス人生は、今、幕を開けたところだ。次戦は16日開幕の女子テニス国別対抗戦ビリー・ジーン・キング杯決勝大会(中国・深セン)に日本代表として出場を予定している。

 大坂なおみ「正直、悲しい気持ちはない。不思議だけれど、ベストは尽くせたと感じているから。全米オープンで勝ち進めたことは間違いなく自信につながるけれど、まだシーズンは終わっていない」

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