J2北海道コンサドーレ札幌の石水創代表取締役社長(43)が、強き良きクラブに戻るため、さらなる改革に取り組んでいく。7日、スポーツ報知の単独インタビューに応じ、ビジョンを語った。
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1月、石水氏はコンサドーレの社長に就任した。4月にGMが退任。役員人事を含めてフロントを刷新した。8月には岩政監督から柴田監督へ、指揮官交代にも踏み切った。様々な決断の思いを改めて口にした。
「一つ言えるのは悪気を持って物事をやっている人はいない。ただ結果であったり、クラブの方向性と合わなければ、プロの世界だったら辞めてもらうしかないかなと。決断に対して後悔みたいのは全くない。
昨年は社外取締役としてクラブに関わってきた。社長となり気付きは多々ある。
「いい時って誰が社長をやってもいいと思うんですけど、僕がなぜこのクラブに入ったかっていうと、良くない状況だったから。そういう時はみんな危機感を持っているから改革がしやすい。そこはしっかりと自分がやっていこうと。僕が考えるのは強化よりも経営のところ。7期連続の赤字で、今年もたぶん終わった段階で7~8億くらいの赤字が出る。そもそも予算を組む段階で3億赤字みたいな、経営が全然なってないというところがあった。本来であれば50億の売り上げをつくり、移籍金なども6億入って、絶対に黒字を出さないといけなかったが赤字が出てしまった。僕も去年取締役として入っていたのですごい責任を感じている。全てオープンにしながら待ったなしで改革していかないと。
前監督を解任した際、「攻撃的サッカーを体現できなかった」と理由を口にした。石水社長の思い描くコンサドーレのサッカーとは何なのか。
「僕がスタイルを抱くということではなくて、あくまでコンサドーレの『走る戦う規律を守る、その笑顔のために』というフットボールのフィロソフィー(理念)なので。見ている人が楽しい攻撃的なサッカーを僕も望んでますし、実際に選手のアンケートでも一番大きなキーワードは攻撃的。それはコンサドーレの歴史の中で積み重ねてきたものだから、それが体現できていないのであれば厳しいなとなった。今は1―0で勝ってる状況でもゴール前を固めて守るとかではなく、最後まで攻めの姿勢を見せている。こういうサッカーだったよなって。僕の中で印象深いのは(2019年)ルヴァンカップの決勝(※1)。ああいう試合が何試合もあったと思うんですけど、あれが札幌のサッカーだったなって。外から加入した選手と話すと『札幌とやるときは楽しかった』って言われる。殴り合い、打ち合いみたいな。勝っても負けても楽しかったと。
18年にはクラブ史上最高のJ1で4位という好成績を残した札幌。輝きを取り戻すことだけでなく、目指すクラブの在り方がある。
「コロナ(禍の影響)で、交流の場がすごく減ってしまったなと。もう一度、企業や学校訪問だったり行政回りとか、選手と道民が触れ合う機会をもっと増やしていかないと。以前はやってたのにコロナの期間で止まった状態になった。世の中はコロナが明けたのに、クラブはそのまま何もやらない感じになってしまっている。そこは力を入れたいので、選手全員に1か月に1回、必ず(学校訪問などで)外に出てと話して、実際にやってもらってる。選手にも間違いなく学びはあるし、学校にプロの選手が来てテクニックとか見て触れ合うだけで、じゃあ次は試合を見に行ってみようと間違いなくなる。そういうタッチポイントをどのクラブよりも一番やろうと取り組んでます」
選手がクラブの思いを感じ、動くためには理解が必要。風通しを良くするため、全選手との面談も終えた。
「選手が大好きなので。
描くクラブづくりへ、是が非でも達成したいのが1年でのJ1復帰。残り10試合、目標達成への思いに、ぶれはない。
「本当に一試合一試合がトーナメントの感じになる。戦うのはもちろん選手だが、クラブ全体だけでなく、サポーター、パートナー企業を含め、一丸となって戦わないと。
(※1)2019年10月26日、クラブ史上初めてルヴァン杯の決勝に臨み、埼玉スタジアムで川崎と対戦。前半10分に菅大輝のゴールで先制するも、後半43分に1―2に。しかし終了間際に深井一希のヘディング弾で追いつき、延長戦へ。延長前半に福森晃斗の得点で3―2とするも同点とされ、突入したPK戦で5―6で敗戦。初タイトル獲得はならなかったが「ルヴァン杯史上最高の決勝」と称される激闘を演じた。
◆石水 創(いしみず・はじめ)1982年3月30日、札幌市生まれ。アルペンスキーの選手として活躍した北海高から、東洋大法学部経営法学科へ進学。2004年に卒業後、石屋製菓に入社。海外留学などを経て、13年7月に同社の代表取締役社長に就任。21年にサザエ食品の代表取締役社長に就任。今年1月、コンサドーレの代表取締役社長に就いた。