確信は裏切られたが、それ以上に心が動いた。7日に閉幕したフィギュアスケートのチャレンジャー・シリーズ(CS)、木下グループ杯(大阪・関空アイスアリーナ)。

米国の男子選手「GOKU ENDO」の名を見て、興味が湧いた。GOKUは、人気アニメ「ドラゴンボール」の主人公、孫悟空が由来だろう。そう勝手に思い込んで聞いたら、当人はニカッと笑って言った。

 「(悟空とは)関係ないんですよね。僕、5月生まれで。ロスって、空がきれいなので」。名の通り、澄み渡るような笑顔で答えてくれた。

 遠藤五空は、日本人の両親のもとロサンゼルスで生まれた22歳。3月生まれの妹と、7月生まれの姉も生まれ月にちなんだ名前だ。自宅で話す日本語は流ちょう。英語は、姉が先に通った近所のスケートクラブで身につけた。「お姉ちゃんを見ている時に『滑りたい』と親に言ったらしくて。

そこで、6歳くらいから始めた」。地元の学校に通いつつ、日本の教育を受けるために、補習校にも通った。

 ノービスで2018年に全米優勝。シニアでは24年全米選手権10位の実績があり、現在は4回転ジャンプを習得中だ。日本での大会は、今大会が初めて。「おじいちゃんとおばあちゃんは、自分の滑りを見るのが初めてで。それを目標に、日本の試合に出たいと思っていました」。祖父母が見守ったフリーは、次々とジャンプを降りて納得の演技。「楽しかったです。観客も温かくて、外を歩くと『頑張って』と言ってくれる。温かくて、今の滑りが出来たので。楽しいが増えました」と、白い歯がこぼれた。

 由来は違えど、目を引く「GOKU」の名前。ドラゴンボールは米国でも人気で、スターバックスに行けば「本当にゴクウ? 嘘だあ! 免許証見せて」と突っ込まれるという。ちなみに好きなアニメは「ワンピース」。遠藤は「スケートのタオルも、ワンピースのものを使っています。(主人公の)ルフィの方が、好きですね」と“推し”を明かした。

 幼稚園の時に描いた将来の夢は「スーパースター」と「医者」。思いは変わらず、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)では心理生物学を専攻して卒業。現役引退後は、内科や小児科を志し医学の学校に通う予定という。現在はは、全力でスケートと向き合う日々。「日本で滑りたいというのが目標だったので、次の目標はどうしようかな、と考えているところです(笑)。ジャンプやスピン、スケーティングをうまくして、自分の100%を伸ばしたい」。スケートリンクでもその後の人生でも、多くの人に元気を与えるんだろう。

そう思わせる、好青年だった。(大谷 翔太)

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