将棋藤井聡太王位=竜王、名人、王座、棋聖、棋王、王将=に永瀬拓矢九段が挑戦する第66期王位戦七番勝負第6局が10日、東京・渋谷区の将棋会館で指し継がれた。先手の藤井が勝利し、6連覇を達成した。

通算タイトル獲得数が31となり、歴代4位の渡辺明九段に並んだ。

 藤井は4勝2敗で防衛を決めたが、今年に入り3度目の2日制の対局となる永瀬の研究手に苦戦していたことを告白。「永瀬九段の工夫を受けるというような形。なかなかうまく対応できなかったのもあって、先手番の時の指し方という意味では課題が残るところがあった」と反省した。

 本シリーズでは、自身初となる2日制タイトル戦での連敗。王位戦以外の棋戦が複数あり、直前の王座戦第1局では6日にシンガポールから帰国した。過密スケジュールだったが「スケジュール自体が要因というよりは、対応できなかったところがあったのかなと感じている」と言い訳せず。藤井は本局を前に3勝2敗と、永瀬に対して1勝のアドバンテージを持っていたが「内容の良い将棋を指したい気持ちが一番」と冷静だった。

 本局は静岡・牧之原市「平田寺」で指される予定だったが、5日に市内で竜巻が発生。各所で人的、物的被害が出ており、同日中に杉本基久雄市長は開催辞退を申し入れた。牧ノ原で対局経験のある藤井は「被災された方にお見舞いを申し上げます。私にとっても(対局場変更は)残念な気持ちだったけど、(本局で)よりよい将棋を指したいという思いも強まった」と思いを口にした。

 今年1月の将棋会館移転後、2日制対局が行われるのは本局が初。8大タイトルのうち、7つを持つ藤井にとって将棋会館での対局は珍しいことになる。「じっくり対局したことで、自分にとってもなじんできた感覚があった」とうなずいた。

 王位戦は愛知・小牧市、兵庫・神戸市、北海道・千歳市、福岡・宗像市、徳島・徳島市で行われた。千歳の対局前には函館から電車で移動した。”乗り鉄”として知られる藤井は「今まで対局でそういった行程をすることはなかった。新鮮で、いい思い出になった」と笑みを浮かべていた。

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