◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 井上尚弥―ムロジョン・アフマダリエフ(9月14日、名古屋・IGアリーナ)
トリプル世界戦の公式会見が12日、名古屋市内のホテルで行われた。世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(32)=大橋=は、勝てば史上最多に並ぶ世界戦26連勝となるWBA世界同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(30)=ウズベキスタン=との防衛戦へ「どんな内容でも勝つ」と勝利にこだわることを誓った。
「キャリア最大の強敵」との対戦まであと2日。アフマダリエフと初対面した尚弥は「あさってはどんな形でも、どんな内容でも、しっかり勝つ。そんな気持ちで戦いたい」とKO宣言を封印。勝利にこだわることを強調した。
「いつも以上の気持ちで、精神的にも追い込んで練習してきた」との自負がある。アフマダリエフが「ボクシングは一発のパンチですべてが変わる。井上のキャリアも変えてしまうのではないか」と不敵に挑発。コメントへの感想を問われた尚弥は「思うことは特にないですね」とあっさり受け流し、貫禄を見せつけた。
会見後の写真撮影では、空気が一変。アフマダリエフ陣営が尚弥、父・真吾トレーナー(54)、大橋秀行会長(60)に中央アジアの民族衣装チャパンを贈呈。袖を通した尚弥は両手を合わせて感謝を示し、笑顔でアフマダリエフと写真に納まった。
同じ14日(米国時間13日)には、米ラスベガスで世界スーパーミドル級4団体統一王者サウル“カネロ”アルバレス(35)=メキシコ=がWBA世界スーパーウエルター級王者テレンス・クロフォード(37)=米国=の挑戦を受けるメガファイトが行われる。パウンド・フォー・パウンド(PFP、全階級を通じての最強ランキング)2位の尚弥は「PFPにふさわしい試合をしたい」と、同8位・カネロと同3位・クロフォードへの対抗心ものぞかせた。
尚弥が勝利すれば、史上最多5度目の4団体統一王座防衛で、世界戦26連勝も世界ヘビー級王座を25度防衛したジョー・ルイス、元5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(ともに米国)と並び史上最多となる。
世界も注目する大一番。大橋会長は「これから50年、100年先、すさまじい名勝負だったと語り継がれる試合になる」と予告。尚弥も「イメージはかなり高まっているが、今ここで言えることはありません。あさって、楽しみにしてください」と記憶に残る戦いを約束した。(勝田 成紀)
◆尚弥に聞く
―チケットは完売。映画館や配信で見る方も多い。
「より多くの方にこの試合を見届けて欲しいと思っている。会場に来られない方も、映画館や配信でこの試合を目に焼き付けてほしい」
―過去4試合で2度ダウンを喫している。
「2度のダウンとも、自分の中でもなぜ起きてしまったかは分かっている。こういった経験があるからこそ、あさっての試合に生かして戦えると思う」
―日本でリング禍が頻発している。
「この件に関して自分自身思うこと、感じることはすごくあるが、この試合を控えた今、発言することはできない。改めて、必要なところで発言していきたい」
アフマダリエフ「歴史を作る」 アフマダリエフは「体調はとてもいい。100%やるべきことをやってきた」と絶好調をアピール。「日本には観光に来たわけではない。勝ってベルトをとるため、歴史を作るために来た。世界一になる」と16戦目での4団体統一王座獲得へ意欲を示した。
一方で、海外メディアのインタビューで「井上はモンスターではない。スーパーバンタム級では、自分の方が上」などと発言していたことを問われると「確かに言った」と認めた上で、「侮辱したりとか、井上選手の体が小さいとかを言いたかったわけではない。
◆世界戦26連勝のルイスとメイウェザー ジョー・ルイス(米国)は1937年6月、NBA(現WBA)世界ヘビー級王座を獲得。現在も全階級を通じて最多となる世界王座25回連続防衛に成功。世界戦22KO勝利は、今年5月に井上尚弥に破られるまで最多記録だった。通算戦績は66勝(52KO)3敗。フロイド・メイウェザー(米国)はスーパーフェザー級(58・9キロ以下)からスーパーウエルター級(69・8キロ以下)までの5階級制覇を達成。WBCスーパーフェザー級王座を8度防衛するなど世界戦26勝全勝(10KO)の成績を残し、50戦全勝(27KO)で無敗のまま引退。来春、元世界ヘビー級統一王者マイク・タイソン(米国)とエキシビションマッチで対戦予定。