清水空跳(そらと)=石川・星稜高2年=は、今大会日本最年少16歳で男女混合1600メートルリレー代表入りを果たした。3大会ぶりのメダルの期待のかかる男子400メートルリレー候補でもある超新星だ。

7月の全国高校総体で桐生祥秀(29)=日本生命=の高校記録(10秒01)を上回る10秒00で駆け抜けた日本短距離界の逸材の走り、特長や人柄などを、指導する星稜高陸上部の西野弥希顧問(48)が明かした。

 西野顧問は清水を「感覚の天才」と評する。清水の両親と同級生だったこともあり、幼少期から超新星の走りを見てきた。武器は、力を入れずとも地面から反発をもらい、驚異的な推進力を生み出す、足の接地ポイントが分かっていること。研ぎ澄まされた感覚は、走りに微妙なズレが生じると「気持ち悪い」と伝えてくるという。同氏は「地面に接地する位置が正確。体で感じ取る能力が高い」と分析する。

 164センチと短距離選手としては小柄だが、全身を使った走りはダイナミックだ。「上半身と下半身をあんなにうまく連動させる選手は見たことがない」と西野氏。昨冬の練習で肋骨(ろっこつ)や肩甲骨周辺の動きを意識させ、体の連動性を高めたことでさらに持ち味を発揮し、高校記録更新の快走につなげた。

 星稜高にある1000種類以上の「ドリル」がその走りを支える。同高の練習は走り込みがなく、清水はウェートトレーニングも行っていない。

練習が2時間半あれば8、9割はこのドリルを行っているという。「骨盤ドリル」など一つ一つの走り、動きに特化し、強化部分を意識させて伸ばす。「この動きは何のためにやるかと説明している。陸上を楽しんでやってほしい」と西野氏は説明した。

 「負けず嫌いでやんちゃ」な性格の清水は、天性の感覚と類いまれな身体能力で成長を続ける。「こちらの予想をいつも超えてくる」(西野氏)。出場すれば、15年北京大会のサニブラウン・ハキームに次ぐ日本歴代2位の年少記録。400メートルリレーに出て表彰台に立てば、日本史上最年少で初の10代メダリストになる。初の大舞台でも「想定外」の走りで、世界を驚かせる力と勢いが清水にはある。(松末 守司)

 〇…清水は7月の全国高校総体(広島)で10秒00(追い風1・7メートル)をマークし、男女混合1600メートルリレーの枠を使って男子400メートルリレーの候補に初めて名を連ねた。自身は1走を希望しており、短距離の信岡沙希重コーチ(48)も「間違いなく戦力」と期待している。今回は“リレー侍”候補が総勢11人と層が厚い。

個人種目でも代表入りしている選手の状況や全体のバランスを見て、出走の数時間前に最終的なメンバーが発表される。

 ◆清水 空跳(しみず・そらと)2009年2月8日、石川・金沢市生まれ。16歳。小学4年生から陸上を始める。石川・長田中3年時に全日本中学校選手権200メートル優勝。24年に星稜高に進学し、同年7月にサニブラウン・ハキームの100メートル高1歴代最高記録を更新する10秒26をマーク。今年7月の全国高校総体は100メートルでU18世界新記録の10秒00(追い風1・7メートル)で優勝。200メートルも制した。164センチ、56キロ。

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