◆世界陸上 第1日(13日、国立競技場)

 34年ぶりに東京で開催される世界陸上が開幕。最初の種目の男女35キロ競歩が行われ、男子では勝木隼人(34)=自衛隊体育学校=が2時間29分16秒で自身初の表彰台となる銅メダルを獲得。

日本勢メダル1号に輝いた。30キロを首位で通過した川野将虎(26)=旭化成=は最終盤に苦しみ、18位だった。女子は15位の梅野倖子(22)=LOKOC=が日本勢最高。金メダルは男子がエバン・ダンフィー(カナダ)で2時間28分22秒、女子がマリア・ペレス(スペイン)で2時間39分1秒だった。

 16年リオ五輪50キロ銅メダルの荒井広宙氏(37)=富士通=は、自衛隊体育学校時代のチームメートでもある勝木を祝福。「50キロから35キロの種目変更に対応できたことがメダル獲得の勝因でしょう」と称賛した。男子のレースは27キロ以降に首位が目まぐるしく交代した。「競歩の過酷さ、醍醐(だいご)味が表れた素晴らしいレースでした」と長い戦いを終えた出場選手をねぎらった。

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 勝木選手とは約5年間、自衛隊体育学校でチームメートでした。銅メダル獲得、おめでとう。

 勝木選手は、とても、メンタルが強い。逆境になるほど強さを発揮します。

この日の蒸し暑い過酷な気象条件は、勝木選手のためのコンディションでした。

 世界陸上の競歩は22年大会以降、50キロから35キロに変更されました。50キロを専門としていた勝木選手は35キロにうまく対応し、成長しました。50キロでは序盤から中盤までじっくりとレースを進め、35キロ以降に勝負をかけるレースプランが多かったですが、この日はスタート直後から先頭に立ち、積極的でした。上位でレースを進め、そのまま粘り、メダルを死守しました。

 ロス・オブ・コンタクト(両足が同時に地面から離れた状態にある反則)を取られることがあり、歩型に苦労していた時期がありましたが、フォームが洗練され、警告が大幅に減りました。

 レース展開でも歩型でも『新しい勝木』を見せてくれた。遠回りしながら、たどり着いた銅メダル獲得に心から敬意を表します。

 メダルが期待された川野選手は30キロを首位で通過しました。勝木選手より余裕を残しているように見えましたが、見た目以上に内蔵疲労が激しかったと思われます。内蔵疲労が限度を超えると、水分を体に吸収できなくなり、最後には脱水症状などに陥ります。前々回は銀メダル、前回は銅メダルを獲得。

日本開催で期待が大きい分、プレッシャーも大きかったと思います。

 女子の日本勢は、まずは3選手が出場したことを評価したいです。その中で、22歳と若い梅野選手が15位になったことは次につながるでしょう。

 男子のレースは終盤、目まぐるしくトップが変わりました。27キロ過ぎにフルタド選手(エクアドル)が先頭集団を抜け出して単独トップに。しかし、その直後に3回目の警告を受けて3分30秒の罰則を受けてペナルティーボックスへ。その間、川野が再び首位に立ちましたが、30キロ過ぎに、ダンフィー選手が(カナダ)がトップを奪いました。競歩の過酷さ、醍醐(だいご)味が表れた素晴らしいレースでした。沿道のファンやテレビ観戦した皆さんに競歩の魅力が伝わったと思います。(16年リオ五輪男子50キロ銅メダル、富士通勤務)

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