プロレスリング・ノアのモハメド ヨネ(49)らが12日、岡山市北区の宗蓮寺で入場無料のイベント「お寺でプロレス 宗蓮寺×プロレスリング・ノア」を開催した。

 プロレスリング・ノアでは最強戦士決定戦「N-1 VICTORY 2025」が8日に開幕したばかりで、前日に岡山、翌日には広島で公式戦が組まれているなか、ヨネや潮崎豪ら「TEAM NOAH」のメンバーらがお寺にやってきた。

 「そりゃあやっぱり、子どもたちのあの笑顔を見たらやめられませんよ」デビュー30周年のヨネは力を込める。昨年5月に開催した第1回大会には、現役だった齋藤彰俊氏も出場。空手の子どもたちの挑戦に胸を貸し、チャンピオンベルトを巻いた姿を、子どもたちの目に焼き付けた。「彰俊さんが楽しそうに話すんですよ。また行きたいね、またやりたいね、って。すごくいい思い出ではあるんですけど、ただ思い出にはしたくない。1回で終わらせてしまうのは、あまりにももったいない」とヨネ。

 宗蓮寺第21世住職の垣本良明氏(55)も思いは同じだった。自らも格闘技に打ち込んだ大の格闘技ファンで、現在も法務の傍ら子どもたちに空手を指導している。「胸板を蹴った自分の足が痛い、なんて状況は、普通に空手をやっていてはまずありえない。子どもたちはあの日、日常や常識を超えたものをプロレスラーから受け取ったんです」あの日の思い出を語る子どもたちを見て、第2回大会の開催を決意した。

 すっかりプロレスの魅力に取りつかれた子どももいる。

リング上でやさしく接してくれた宮脇純太選手のファンになり、1月には高松市で開催された凱旋興行にも駆けつけた。将来の夢はもちろんプロレスラー。海水パンツ姿でトレーニングに取り組むのが日課だという。「やってることが昭和なんですよ」住職はそう笑った後で「目標を持った人間は強い。いつかこのイベントがきっかけとなったプロレスラーが生まれるかもしれないね、とヨネさんと話しているんです」と続けた。宮脇は「レスラーに憧れていた自分が、憧れてもらえる存在になるなんて夢にも思わなかった。これからも憧れの存在でいられるよう、頑張らないといけませんね」と笑顔を見せた。

 イベントのテーマである「子どもたちに元気と強さを!」は少しずつ、しかし着実に浸透しているようだ。今大会もリング開放やプロレスの楽しみ方講座が行われ、地域の子どもたち約100人がプロレス独特の世界観に溶け込んでいく。試合は①大原はじめ&カイ・フジムラvs宮脇純太&小田嶋大樹②アレハンドロvsブラックめんそーれ③モハメド ヨネ&佐々木幹也vs潮崎豪&小峠篤司の3試合。スピード感あふれる攻防、時には笑いが起こるマスクマン同士の攻防、スピードとパワーが交錯するメインイベント。ヨネと潮崎のパワフルな攻防に、子どもたちは一瞬声を失い、やや遅れて大きな歓声が沸き上がった。

ヨネの力感あふれるキン肉バスターに小峠が沈んだ瞬間、境内の盛り上がりは最高潮に達した。

 プロレスリング・ノアでは昨年より、小中学生の観戦無料に取り組んでいる。プロレスの次代を担うファン層の開拓と、明日のプロレス界を担う人材の創出。「プロレスのこれからを考えた時、子どもたちとどう向き合うかはとても重要なテーマ。しっかりと向き合っていけば、時間はかかっても必ず結果は出ると信じている」とヨネが言うと、垣本住職は「子どもたちには岡山の、日本の将来を託せる人間に成長してほしい。そのためには大人たちが、自分たちにできることを一つ一つやっていくこと」と呼応した。

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