カーリング ミラノ・コルティナ五輪最終予選代表決定戦 最終日(14日、北海道・稚内みどりスポーツパーク)

 女子決定戦は、フォルティウスがSC軽井沢クに6―5で勝って3勝目。五輪最終予選(12月、カナダ)の日本代表に決まった。

北海道銀行時代の22年北京五輪をかけた代表決定戦では、逆転負けを喫したスキップ・吉村紗也香(33)らは4年前の雪辱。幾度の崖っぷちに立たされながら、野球のWBCでヘッドコーチを務めた白井一幸氏(64)から伝授された「大谷翔平メンタル」で乗り越えた。最終予選は残り2枠。出場枠を確保すれば五輪代表に決定する。

 「止まってくれ」。スキップ・吉村は、4年分の思いを込め祈った。ハウス(円)中心に置けば最終予選への切符が決まる最終投。想定より石は伸びた。4年前は2連勝から3連敗を喫し涙した舞台。五輪への執念が石を約指2本分、およそ3センチ差で止めた。「うれしさと、緊張から解放された」。両チームでSC軽井沢クのNO1との距離を確かめ勝利を確信すると、笑みと涙があふれた。

 初日から2連敗。18年平昌、22年北京五輪の代表決定戦で煮え湯を飲まされてきたロコ・ソラーレに先に王手をかけられ、幾度も逆境に立った。そこから起死回生の連勝で三つどもえの戦いで大どんでん返しの勝利をつかんだ。

 ゼロからはい上がったチームだ。吉村をはじめチームの多くが北海道銀行の「元所属」。施設、遠征費と恵まれた環境にあったが、14年ソチ五輪5位入賞後18年平昌、22年北京と五輪出場を逃し、21年11月末には北海道銀行からスポンサー契約を打ち切られた。クラブチームの「フォルティウス」として生まれ変わり、スポンサーは22社に。その応援をまとったユニホームで決めた、イメージ通りのドローショットだった。吉村は「自分たちの覚悟、思いを一投一投にこめた」とかみしめた。

 チームは昨秋、以前も師事したことのある23年WBCで日本代表HCの白井氏をメンタルコーチとして再度招へい。同氏は、メキシコとの準決勝で日本のサヨナラ勝ちを呼び込んだドジャース・大谷翔平投手の心構えを選手に伝えていた。「大谷は『こういう事(逆境)があるから、世界一には価値がある』と。

前向きな言葉で『俺が塁に出るから、後はよろしくね』と言って二塁打を打った。そういう話をした」と白井氏。リザーブ・小林未奈は「その思考は、今季チームで意識していた」と明かし、大一番で体現してみせた。

 12月の最終予選は8チームで2枠の五輪切符を争う。競技歴24年、吉村にとっては初の五輪を目指す再びの大勝負となる。「メンタル的には、最強だと思います」と白井氏。吉村は「重圧のかかる中でいいパフォーマンスが出来たので、自信を持って。みんなで五輪の出場権を、何が何でも取りに行きたい」。チーム名はラテン語で「より強く」。新生フォルティウスが、世界に挑む。(大谷 翔太)

 ◆フォルティウス 2011年に「チーム青森」で五輪経験もある小笠原歩、船山弓枝らが中心となり北海道銀行フォルティウスとして創設。札幌を拠点に活動。

14年ソチ五輪(5位)に出場後、吉村紗也香が加入。メンバーを入れ替えながら五輪に挑戦してきたが、18年平昌、22年北京と2大会連続で五輪出場を逃し、21年11月末に北海道銀行との契約が終了。その後、クラブチームとして再出発。チーム名はラテン語で「より強く」の意味。

 ◆カーリング五輪最終予選 女子は12月の五輪最終予選(カナダ)で出場2枠をかけて、日本(5)、ノルウェー(7)、米国(10)、トルコ(12)、エストニア(14)、予備予選を勝ち上がった3チームの合計8チームと戦う。※()内は世界ランキング。

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