◆世界陸上 第3日(15日、国立競技場)

 男子3000メートル障害決勝で昨年のパリ五輪8位入賞の三浦龍司(23)=スバル=が、8分35秒90の8位で同種目日本人初の2大会連続入賞を果たした。世界大会3年連続入賞の快挙。

7月に日本新記録をマークし、自信を持って臨んだ自国開催大会。表彰台にはあと一歩届かなかったが、ラスト約200メートルからはメダル圏内の3位に上がるなど執念の走りを見せ、国立競技場を最高潮に盛り上げた。

 持っている力を全て出し切った。地鳴りのような大歓声を受け、三浦は8位で必死にゴールラインに飛び込んだ。「本当にメダルが、自分でも見えたかもっていう一瞬があった。悔しさがすごく大きい」。今季最初から掲げていた日本人初のメダルには届かなかったが、粘りの走りで自国の会場を最高潮に盛り上げ、23年ブダペスト世陸6位、24年パリ五輪8位に続く、3年連続の世界大会入賞だ。「耳鳴りと錯覚するくらいの声を頂いて。宝物の思い出になった」とかみしめた。

 執念だった。スローペースで始まった決勝。「仕掛けどころは皆一緒。

最後のたたき合い」とラスト1周の鐘が鳴った瞬間、全員が強烈なスパートをかけた。三浦は集団の9番手辺りから、大歓声に背中を押されて前方へ。ラスト約200メートルでメダル圏内の3番手浮上も、最後の障害を越えて「選手と接触し、もつれてしまいました」。何とか体勢を持ち直し、入賞ラインは懸命に死守した。

 万全では無かった。今季初戦の4月のダイヤモンドリーグ(DL)アモイ大会で早々に世陸内定を決め、7月はDLモナコ大会で、自身の記録を6秒48縮める8分3秒43の日本記録を樹立した。だが、今大会直前に右足首を負傷。「ぎりぎりのところで調整。水濠(ごう)や障害に不安がある状態だった」と明かした。

 強い思いだった。世界大会デビューで7位入賞を果たした21年東京五輪。日本記録も2度出した国立競技場は三浦にとって特別な場所だ。

「東京に世界陸上が来たのは幸運な巡り合わせ」。できる限りの準備を重ねて走り抜き、「最後のサバイバルレースもしっかり走って行くことができた。4年前の東京で走った時よりも、確実に成長できている」と胸を張った。

 満員の会場を沸かせた。「音圧というか、ボルテージ。力を引き出してもらえた」とたくさんの声援に感謝した。世界大会がない来年は「自分の地盤を高めていく年にしたい。記録の伸びしろはある」と貪欲に成長を期す。京都・洛南高から始め「特殊なことをやっているのも、僕の走りのスタイルと合っていた。楽しい」と好きだからこそ極めてきた“サンショー”。悲願の日本勢初メダルへと23歳は、前だけを見て進んでいく。(手島 莉子)

▽男子3000メートル障害決勝

〈1〉ジョーディ・ビーミッシュ(ニュージーランド)8分33秒88

〈2〉バカリ(モロッコ)8分33秒95

〈3〉セレム(ケニア)8分34秒56

〈8〉三浦龍司(SUBARU)8分35秒90

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