俳優の冨家ノリマサ(63)がこのほど、スポーツ報知の単独インタビューに応じ、23日開幕の舞台「ヴォイツェック」(東京・東京芸術劇場プレイハウス)の意気込みを語った。昨年、大ヒットした映画「侍タイムスリッパー」(安田淳一監督)では映画スター役だったが、今作では軍人を演じる。
「侍―」は自主制作映画ながら社会現象を巻き起こし、日本アカデミー賞の最優秀作品賞に輝いた。
「完全にターニングポイントですね。役者人生が変わりました。こんなことってあるんですね」
熱心なファンは「侍(さむ)タイファミリー」と言われる。「63歳にして“推し”が増えて、ありがたい。上映後に握手やハイタッチをしたり、侍タイファミリーの方々と交流できたのもうれしかった」と感謝している。
主演の山口馬木也や安田監督は家族のような存在だ。
「最初は池袋のシネマ・ロサで1か月上映してもらえるだけで、うれしかった。それが全国に広がって、多くの方々に愛してもらった。監督や馬木也と会うと『お客さんの愛情に育ててもらった映画だね』と話しています」
つい最近は大ヒット中の映画「国宝」(李相日監督)を引き合いに「公開が今年じゃなくて良かったな」と言い合ったという。
現在は舞台「ヴォイツェック」の稽古中だ。軍事占領下のドイツ・ベルリンを舞台に主演の森田剛演じる英国兵士・ヴォイツェックが苦悩を抱えながら、自分を見つめ直す物語。
森田とは初共演。「すごくシャイな人ですけど、演劇に対する情熱がある。ドロドロした物語の中でも、森田さんとヒロインの伊原六花さんのシーンはキラキラしています」。稽古場では冨家がムードメーカーで「休憩時間に『みんなでバーベキューでもやりたいね』と話したり、同じく60オーバーの栗原英雄さんと2人で場を和やかにしています」
決して分かりやすい作品ではないが、「直感で感じてもらいたい。挑戦する勇気を描いた社会派作品でもある。セリフの奥にある人間のエゴ、欲望を届けることができれば、面白い芝居になるはず」と力を込める。「侍タイファミリーにもぜひ、この舞台を見ていただきたい」と来場を呼びかけた。(有野 博幸)
〇…23~28日に東京芸術劇場プレイハウスで上演後、10月3~5日に岡山芸術創造劇場ハレノワ中劇場、同8、9日に広島・JMSアステールプラザ大ホール、同18、19日にJ:COM北九州芸術劇場大ホール、同23~26日に兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、同31日~11月2日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホールで上演。同7~16日に東京芸術劇場プレイハウスで凱旋公演を行う。
◆冨家 ノリマサ(ふけ・のりまさ)1962年3月4日、神奈川県生まれ。63歳。83年、NHK連続テレビ小説「おしん」で俳優デビュー。主な出演作はNHK大河ドラマ「徳川家康」「葵 徳川三代」「功名が辻」、映画「最後の乗客」「愛のぬくもり」など。10月3日スタートのテレビ東京系ドラマ「晩酌の流儀4」(金曜・深夜0時42分)に出演する。身長175センチ。血液型B。