◆大相撲秋場所8日目(21日、東京・両国国技館)
東前頭11枚目・正代が、東同8枚目・宇良を上手投げで下し、5連勝で7勝目を挙げた。元大関が2020年秋場所以来の優勝へ、全勝の横綱・豊昇龍との1差を守った。
正代はとっさの判断で1敗を守った。業師・宇良に立ち合いで左のわきの下に潜り込まれた。「相手の形だった」。不利な体勢でも自然に体が動いた。左腕をグイッと上げて相手を起こし、上手投げで仕留めた。「狙っていたわけではない。前に出ていたら危なかった。無理に前に出ることなくさばけたのは、今日に関しては良かったんじゃないか」。1敗同士の対決を淡々と振り返った。
熊本出身力士として初の賜杯を抱き、大関昇進を決めた20年秋場所から5年が過ぎた。当時の思い出を問われると、少し考え「全然ワイワイされてないので…」とつぶやいた。コロナ禍で1日の観客上限は通常開催の4分の1以下の約2500人。観客はマスクを着用し、声援も自粛された。祝賀行事の多くがなくなり、地元・熊本での優勝パレードも開催されなかった。「優勝旗を受け取って、ただ帰っただけ」と、さみしそうな表情で振り返った。
普段から自虐的なコメントが多く、大きな目標も掲げない。1月の初場所前に新年の抱負を聞かれた際も「とりあえず今年1年も幕内にいたいなと。三役? いやいや、壁は厚いので。見てる人から『年取ったな』と言われないようにしたい」と控えめだった。
今場所も「優勝」の2文字を口にすることはないが、期待の高まりは感じている。7日目の取組後の支度部屋では「こんなに(報道陣に)囲まれるのは大関以来。
◆20年秋場所VTR 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、1日の観客数の上限を2500人にして開催。正代は4日目、7日目こそ敗れたが、序盤から順調に白星を重ね、14日目を終えて単独トップに。千秋楽は3敗で当時新入幕だった翔猿を退けて初優勝。大関昇進目安の「三役で直近3場所33勝」には1勝届かなかったが、13勝2敗の好成績を受け、場所後に大関昇進を果たした。