◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 「流行なんて、文字通り流れていく」。芸術家の故・岡本太郎さんの言葉が刺さった。

22年にNHK・Eテレで放送された特撮ドラマ「TAROMAN」(映画「大長編 タローマン 万博大爆発」が公開中)にハマった。作中にちりばめられた“元ネタ”が気になり、岡本さんの名言を集めた「壁を破る言葉」(05年、イースト・プレス)を読んで、最も響いた言葉だ。

 ネット原稿を扱う部署にいて1分単位で変化するページビュー(PV)と向き合っていると、一日の中で潮目の変化に過敏になる。一時盛り上がったネタもあっという間に埋没する、変化のスピードは恐ろしいほど速い。PVを伸ばすために文字通り流れていく“流行”をとらえて乗ることに、疲れを覚えることもある。

 岡本さんはネットもSNSもない時代を生き、1996年1月に亡くなった。今を生きていたらどう表現するのだろうか。冒頭の言葉は、流行は流れていくのだから気にしなくていい―という意味ではなく、敏感に反応しながらも不変のものを創造し受け継ぐ大切さを、同時に説いている。

 新聞製作は朝ドラや大河ドラマのような「不変さ」がある。一方でネット原稿には縦型配信ドラマのような新たな発想も求められ、「なんだ、これは!」状態。それでも何かを伝えることには変わりはないのではないか。

 指針ができたところで、同著の別な言葉が刺さる。

「同じことをくりかえすくらいなら、死んでしまえ」。変化を恐れず、流行にとらわれず、不変の何かを残す。思考回路が爆発しそうな難題である。(デジタル担当・大和田 佳世)

 ◆大和田 佳世(おおわだ・かよ) 2006年入社。9月からデジタル編集部ソーシャルメディア課。

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