◆プロボクシング ▽WBC世界バンタム級(53・5キロ以下)王座決定戦12回戦 同級1位・那須川天心―同級2位・井上拓真(11月24日、トヨタアリーナ東京)

 WBC世界バンタム級王座決定戦で、同級1位の那須川天心(27)=帝拳=と同級2位の井上拓真(29)=大橋=が、11月24日にトヨタアリーナ東京で対戦することが25日、発表された。WBC・IBF世界同級王座を保持していた中谷潤人(27)=M・T=がベルトを返上し、空位となった王座を争う。

キックボクシングからの転向8戦目、世界初挑戦の天心は「僕が勝った方がボクシング界が面白くなる」と王座獲得を宣言。拓真は「総合力で勝つ」と王座返り咲きを誓った。

 マイクを手にした天心は、待ってましたとばかりに立ち上がった。まずは「はじめまして、世界・那須川天心です」とあいさつ。「胸を張って、ここまでやってきたことを褒めてやりたい。毎試合、課題があって自分の中につぼみをつけてきた。花をしっかり開かせようと思う」とデビュー8戦目での開花を宣言した。

 ボクシングデビューを果たした23年4月8日、同じ有明アリーナでWBA世界バンタム級王座を獲得したのが拓真だった。世界戦6試合を経験している元世界王者との対戦に「自分のキャリアの中で一番負けるかもしれないと思えるカード。そこは自覚している」と語る一方で「もちろん負けることは一切考えてない」ときっぱり。「ボクシングだけでなく、格闘技でやってきたこと全てを使って井上拓真という男にぶつかっていきたい」と闘志を燃やした。

 天心ワールドも繰り広げた。

会見で「拓真選手にしっかり自分の幽霊を見せたい」と予告。会見後の取材で「幽霊の正体見たり枯れ尾花」のことわざを謎かけのヒントとして挙げた。「その意味を解釈していただければ理由は分かるんじゃないかな」。WBA同級休養王者・堤聖也(29)=角海老宝石=が拓真勝利の予想を語っていたことを知らされ、「いいですね、皆さん“幽霊”を見てますね」と不敵に笑った。

 「ここで勝ったとて、ちっちゃい革命は起きるかもしれないが、まだ目的地ははるか先。平坦な道は歩かない」。天心の野望は、世界王座獲得の先へと広がっている。「ベルトが4つある。そこをしっかりまとめていきたい」とバンタム級4団体統一への意欲を示すとともに「この階級で終わるつもりもない。ちょっと楽しみにしてもらえたら」と複数階級制覇も見据えた。

 「俺が必ずボクシング界を面白くしてやろうと思っている。僕が勝った方が面白くなると自信を持って言える」。

キックの“神童”が、いよいよボクシング界の主役に名乗りを上げる。(勝田 成紀)

 〇…天心VS拓真の前座には、東洋太平洋フェザー級王者・中野幹士(30)、WBOアジアパシフィック・バンタム級王者・坪井智也(29)、WBA世界同級4位の日本同級王者・増田陸(28)=いずれも帝拳=ら日本人選手の出場も予定されている。対戦カード等詳細は後日発表される。

 ◆天心に聞く

 ―拓真戦を知らされた状況は。

 「練習していたら急に『拓真あるかもね』と言われて、シャドーボクシングのラウンド間のインターバルで試合が決まった。やっと世間に響くカードができるなと、ワクワクした」

 ―どういう試合展開に。

 「1ラウンドから行く。自分の長所短所をしっかり磨いてきた。バチッと決まればすぐに終わるかな。自分もワクワクしている」

 ―拓真陣営は、ファミリーで一致団結している。

 「やるのは拓真選手。意識は別にしない。

まとめて来るならかかってこい、という感じ。僕には帝拳の素晴らしいチームがいる」

 ―ボクシングでは初のメインイベント。

 「下からしっかり上がってきた自負はある。メインというのは興行の顔。あと、一日チケットを手売りしようと思っている。心意気をみなさんに感じてほしい。今の時代だからこそ、自分の気持ちを感じてもらうことが大事なのかなと思う」

 ◆「幽霊の正体見たり枯れ尾花」 「恐ろしいと思っていた物や人も、実体を知ると何でもないものだった」という意味を持つ。また、「心に疑いの気持ちがあると、何でもない物や人が恐ろしいものに見える」との意味もある。江戸時代の俳人・横井也有の俳文集「鶉衣(うずらごろも)」に収録されている句から派生した言葉。

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