東京・墨田区が「文化芸術による『地域力』の向上」などを目的とした「すみだ五彩の芸術祭」を2026年9月から3か月開催することを2日、発表した。区内各所を舞台に自治体が主催となり、数か月実施する総合的な芸術祭としては東京23区初。

キックオフとして今月24日にはミュージシャンの坂本美雨らを招いたプレイベントも開催する。

 会見は両国の回向院(えこういん)にメディアを集めて行われた。その理由について、山本亨区長は「明暦の大火から江戸の人々が再興へ向かう源となった場所であり、大相撲発祥の地でもある。葛飾北斎や忠臣蔵など、まさに、すみだの歴史の舞台となってきた場所だから」と説明。その上で「人から人へと受け継がれた歴史は、江戸の町人文化を生み、明治にはものづくりの発展とセツルメント運動による地域福祉を育み、その後は音楽都市構想の推進、文化の発信拠点が生まれ、芸術が人々の暮らしの近くに息づいた」とし、総合芸術祭開催の目的などについて明らかにした。

 目指すところは「区民の誇りと愛着を育み、人々のつながりを強化し、魅力的で活力ある地域社会の実現」(文化芸術振興課)。墨田区では2016年からアートプロジェクト「隅田川 森羅万象 墨に夢」(通称すみゆめ)を開催。「北斎」「隅田川」を主なテーマとし、すみだの地域資源を活用する参加・体験型の“アートの祭典”を9月から12月中旬をメイン期間に行ってきているが、そのテーマを広げて、これまでのノウハウを生かした大がかりな総合的芸術祭になる見込みだ。

 開催は2026年9月4日~12月20日。芸術祭の名前である「すみだの五彩」は、墨田の文字に含まれる墨は筆遣いと余白を組み合わせることで多彩な世界を表現することが可能で「墨に五彩あり」と言われることから命名。ロゴはデザイナー・髙橋正実氏が手掛けた。東京スカイツリーのある業平の地で平安時代の歌人・在原業平が詠んだ「都鳥」をモチーフに、過去と現在、未来をそれぞれ金と銀、墨で表し、思いを込めた。

 「単なる3か月間のイベントではない。これは墨田区の将来をしっかり描ける、その地盤がしっかり固まる、10年後の墨田区に大いに期待できる、そんな芸術祭になることを望んでいるし、みんなの力で成し遂げていきたい」と山本区長は言葉に力を込めた。今月24日に坂本美雨らを招いて行われる隅田公園そよ風ひろばでのキックオフ・プレイベントでは、コンサート開演前に芸術祭エグゼクティブディレクター・神野真吾氏とのトークイベントに臨み、区長自らこのイベントにかける思いを語る。

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