◆秋季近畿地区大会▽1回戦 大阪桐蔭7―1市和歌山(19日・さとやくスタジアム)

 来春センバツ(26年3月19日開幕)出場校選考の重要な参考資料となる秋季近畿大会は1回戦が行われ、大阪桐蔭(大阪1位)が市和歌山(和歌山2位)に快勝した。4番の谷渕瑛仁(えいと)三塁手(2年)がサイクル安打を達成。

3季ぶりの甲子園に前進した。近江(滋賀1位)は、最速148キロ右腕の上田健介(2年)が7回1失点で市尼崎(兵庫2位)を退けた。天理(奈良2位)は彦根東(滋賀2位)に完勝した。

 球場がどよめく中、新4番は右手を掲げダイヤモンドを回った。9回無死、大阪桐蔭の谷渕が右越えソロ弾を放ち、サイクル安打を達成。ただ、快挙を知ったのはベンチに戻り声をかけられた時で、「個人の結果よりチームが勝てばいいと言われてきたので。気にしていなかった」と事もなげに答えた。

 来秋ドラフト候補の最速151キロ右腕・丹羽涼介(2年)からは3安打をマークした。3回1死一塁で左中間への適時二塁打を放つと、5回1死では右前打。7回には右越え三塁打と、全て直球をはじき返した。「めちゃくちゃ速いとは感じなかった。距離を取れてしっかり打ち込めたので、感謝したい」と、谷渕が頭を下げたのは前エースの森陽樹と中野大虎(ともに3年)。

23日にドラフト会議を控える最速150キロ超えの両右腕が、“丹羽対策”に毎日全力で投げてくれた。試合中、ベンチから「森さんと中野さんのほうがいいぞ!」と声が上がるなど、ナインがひるむことはなかった。

 広角に打てる強打者で、勝負強さも併せ持つ。今秋初めて背番号をもらい、4番に座った。大阪府大会の近大付との決勝では決勝打を含む2安打5打点の活躍で、チームを2年ぶり13度目の優勝に導いた。ただ、「打撃は長(た)けたものがあるが、守りや走塁がまだまだ甘い。怒ってばっかり」と西谷浩一監督(56)。力不足を感じる日々の中で、谷渕は「野球ノートは指導者とのコミュニケーションの一つ。中心選手になって毎日出すようになった」と明かすなど、4番の自覚は日を追うごとに増している。

 昨秋は初戦敗退でセンバツ出場を逃し、夏の甲子園にも届かなかった。「甲子園に出て日本一になってこそのチームだと言われてきた」。“西の横綱”の主砲が、その一打でチームをさらに上へと押し上げる。

(瀬川 楓花)

 ▼サイクル安打 甲子園大会で達成したのは7人だけ。春は79年決勝の浪商戦でマークした箕島・北野敏史1人。夏は91年3回戦(対秋田)の大阪桐蔭・沢村通ら、19年2回戦(対国学院久我山)の敦賀気比・杉田翔太郎まで6人が記録している。大阪桐蔭の選手では、16年春の大阪大会2回戦で、吉沢一翔がマーク。また、10年9月に日米親善高校野球大会(米国)に参加した全日本高校選抜では、現地高校選抜との練習試合で、履正社・山田哲人(現ヤクルト)、興南・真栄平大輝が、「1試合2人のサイクル安打」を記録した。

 ◆谷渕 瑛仁(たにぶち・えいと)2008年6月14日、高知・四万十町生まれ。17歳。窪川小1年からソフトボールを始め、窪川中では宇和島ボーイズ(愛媛)に所属。2018年に2度目の春夏連覇を果たした根尾(中日)、藤原(ロッテ)ら“最強世代”に憧れ、大阪桐蔭に進学。今秋から背番号3でベンチ入り。50メートル走6秒6。177センチ、77キロ。

右投左打。目標はOBの森友哉(オリックス)。

 〇…1924年(大正13年)の第1回大会から98回目の来春センバツで、史上初めて近畿の公立校出場なしとなる可能性が出てきた。近畿大会でこの日、市尼崎、彦根東、市和歌山が敗退。18日に敗れた乙訓を含む出場4校全てが初戦で姿を消し、センバツ絶望的となった。2010、14、15年は一般枠で近畿の公立は選出されなかったが、21世紀枠で出場。同枠など出場32校が決まる来年1月30日の選考委員会が注目される。

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