今年の朝日杯フューチュリティステークス・G1(12月21日、阪神競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・06年勝ち馬で蛯名正義騎手(現在は調教師)が騎乗したドリームジャーニーを振り返る。

 2番人気のドリームジャーニーが直線一気の追い込みを決め、2歳馬の頂点に立った。それは瞬時の出来事だった。416キロの小柄な馬体が、大外から弾丸となって襲いかかった。並び、かわし、そして一気に先頭へ。先行勢の競り合いをスローモーションに変えて、あっという間にドリームジャーニーが突き抜けた。

 「軽く飛んだね」蛯名から笑みがこぼれた。もちろん、ディープインパクトを意識した発言だ。「ゲートの出は悪かったが、いつもこんなもの。折り合ったから、かえって良かったかもしれない。とにかく折り合い。腹を決めて自信を持って乗った」出遅れ、直後に折り合いを欠いた東京スポーツ杯2歳S(3着)の二の舞だけは避ける―。信念を持って、最後方で折り合いに専念。

直線の爆発力を引き出した。

 大逆転劇に、池江寿調教師も興奮冷めやらない。「5年前のステイゴールドを思い出した」引退レースの01年香港ヴァーズを差し切った父は、助手時代に手がけた名馬。母の父メジロマックイーンともども、父・池江郎厩舎で活躍した池江ファミリーの総決算と言える血統だ。自身は初重賞勝ちがG1。「何度も勝てるチャンスを取りこぼしてきたから…。いつか勝てると思っていたが、G1で、自分に縁のある血統で勝ててうれしい」と喜んだ。父・池江郎師が管理するディープインパクトは06年12月24日の有馬記念でターフを去る。息子の池江寿師は帰り際、ポツリとつぶやいた。「ディープの小型版だね」名馬と入れ替わるようにして登場した小さな優駿。日本競馬を引っ張るスター候補が誕生した。

 ドリームジャーニーの通算成績は31戦9勝。

06年朝日杯FSなどG1・3勝を含め、重賞7勝。09年には史上9頭目となる宝塚記念、有馬記念の春秋グランプリ制覇を達成し、最優秀4歳以上牡馬に選ばれた。11年6月に競争馬を引退し、種牡馬になった。獲得賞金は8億4797万3000円。

 父ステイゴールドは現役時代に“善戦マン”“善戦ホース”と呼ばれ愛された名馬。引退レースとなった香港ヴァーズ・でG1・20戦目で悲願の初制覇。引退の花道を飾るとともに、日本産馬&日本デビュー馬として初の海外G1ウイナーに輝いた。種牡馬になってからは、ドリームジャーニーをはじめ、ゴールドシップ、オルフェーヴルなど数多くの名馬を輩出した。

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