巨人軍前監督で、オーナー付特別顧問の原辰徳氏(67)が11日、スポーツ報知に特別寄稿した。巨人史上最多となる1291勝を誇り、09年のWBCで侍ジャパンを世界一に導いた名将は、日本の1次ラウンド全試合をチェック。

12打数無安打と不振にあえぐ近藤健介外野手(32)の復活を確信し、井端弘和監督(50)の手腕を高く評価。一発勝負となる準々決勝以降の戦いへ向け「接戦に持ち込め」「絶対に先取点」という連覇への“心得”を披露した。

 侍ジャパンの1次ラウンドを全試合見させてもらった。戦前から楽な試合は少ないだろうなと思っていた。点差がついた試合もあったけれど、その数字では測れない接戦が続いた。相手国も全体的にレベルが上がっている。その中で侍ジャパンはきっちり全勝で1位通過を果たした。その事実が何より大きい。

 今回の侍は大谷君、鈴木君、吉田君ら、パワーでも勝負できる選手が多くスタメンに名を連ねている。ただ、大味な野球はしていないよ。どの選手もここって時には進塁打を打っている。その点ではしっかり日本の良さを継承している打線という印象だ。

 近藤君も1次ラウンドでは12打数無安打と結果こそ出ていなかったが、しっかりとチームバッティングを含めて、考えて打席を消化している。彼みたいに読みも含めて状況判断ができる選手は本当に貴重だよ。オーストラリア戦だって、初回2死一塁から右翼線への当たりをフェンスまで到達させず単打で止めたのは、本当にナイスプレーだった。あの試合の隠れた殊勲者だ。バットでもここから必ずやってくれると信じている。

 井端監督の戦いぶりも、ブレない意志の強さを感じさせてくれる。チェコ戦の戦い方を見ても、しっかりとしたプランニングを持って。あの試合、勝ちにこだわるならば、少し違った用兵になってもおかしくなかった。スタメンはそこまでに出場機会の多くなかった選手をそろえたが、それぞれに3打席を渡してあの接戦なら、次の手を…と考えてもおかしくない。その時でもほとんど動かなかった。

 投手起用でも5回2死に先発の高橋君から宮城君へスイッチした。その時、高橋君は63球を投げていて、規定上もう1人打者は投げられた。

あと1人行ってもらい、次の回の頭から宮城君、ということも描けたはず。試合後に井端監督は「想定していて、やりたかったことだったんです」と明かしてくれた。負傷者が相次いだこともあり、今回のチームではいわゆる本職が中継ぎという投手が多くはない。回の途中で行く経験もさせておくプランニングを遂行した。勝ちにこだわる中では事前の想定から離れ、動きたくなるケースも監督には時にあるもの。彼はブレず、結果的に勝ちも拾った。緻密さと初志貫徹。その軸をしっかりと持って戦ってくれている。

 準々決勝以降の戦いは、米国に場所を移しての一発勝負だ。今こそ重圧の中で戦う度胸、“侍魂”というものを持った選手が活躍してくるよ。まず日本としては、最初から接戦に持ち込むんだという心構えで、我慢比べの展開はこっちのペースだと思うことが重要だ。例えばノーヒットで1点を奪うという部分は、日本が世界一だ。

つなぎ、足攻、自己犠牲。それが長年培った日本野球であり、他国も最大なる脅威だと思ってる点のはずだ。

 その点で鍵を握るのはやはり、先発投手になる。韓国戦で初回に3点を先制され、それを逆転して勝った。それも素晴らしいことだけど、しかし戦い方としてそうそうあるものではない。特に今度は中南米国のお祭り野球が相手になる。乗せてしまうと手がつけられない。あとはどんな試合でもそうだが、ミスで相手に隙を見せてしまうことは避けたい。

 もうここから先を考えず、とにかく目の前の試合を取るという総力戦になる。種市君、隅田君をうまく使っていきたいね。三振が取れる投手は本当に貴重だ。種市君なんか決勝で先発させたら面白いかもしれないよ。

相手にもデータが多くそろってないはずだ。侍の連覇という吉報を、楽しみに待ちたい。(巨人軍オーナー付特別顧問、09年WBC日本代表監督)

 ◆09年WBCでの原監督 イチローマリナーズ)を軸に据え、当初は3番構想を持っていたが、大会直前の強化試合で結果が残らず、本大会では全試合「1番・右翼」で起用。大会中、不振にあえぐ中でも出し続け、決勝・韓国戦で優勝を決める一打を放って指揮官の思いが結実した。また抑えの藤川(阪神)が足の状態に不安を抱えていた中、準決勝以降は先発だったダルビッシュ(日本ハム)を抑えに配置。柔軟な采配で侍ジャパンを連覇に導いた。

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