目的地は観光地とは限らない。ステージやスタジアム、あるいは一瞬の登場シーン。

その場所に足を運ぶための移動が、ひとつの消費として存在感を増している。株式会社Oshicocoの調査によると、推し活層の遠征経験は全体の6割以上にのぼり、特別な行動ではなく日常的な選択として定着している。

 頻度にも特徴がある。遠征回数は年2~3回が34.7%で最多となり、年1回22.1%、年4~5回21.1%と続く。さらに年10回以上の層も約19%存在し、一定数のファンが高い頻度で移動を伴う活動を行っている。イベントやツアーの開催地に合わせて全国を移動する動きが広がっていることがうかがえる。

 費用は軽くない。遠征1回あたりの平均は約5.9万円で、最も多い価格帯は3~5万円が33.7%だった。一方で、10万円以上を使う層も1割強に達する。交通費や宿泊費に加え、現地でのグッズ購入や複数公演の参加が重なることで、出費は膨らみやすい。実際、最も負担が大きい項目として交通費を挙げた人は53%超に達し、グッズ購入約30%、宿泊費9.5%を上回った。

 移動はそのまま地域消費にもつながる。

遠征先での行動としては、地元グルメを楽しむが60.0%で最多となり、観光地巡りや買い物もそれぞれ37.9%に上る。イベント参加だけで終わらず、滞在先での消費が広がっている点が特徴だ。遠征先は東京都が61.1%で最多、神奈川・大阪が各46.3%、愛知45.3%と大都市圏に集中する一方、宮城や静岡など地方都市にも波及している。

 調査は2026年4月6日から8日にかけて、Instagramの推し活メディアフォロワーを対象に664件の回答を集計した。遠くても会いに行きたいという動機が、時間と費用の負担を上回る。移動そのものが体験となり、周辺の消費を生む。そんな行動が、静かに市場の輪郭を変えつつある。

編集部おすすめ