「人生七転八起」は、これまでの闘病体験に加え、他ジャンルで新たなスタートを切ったり、“二刀流”として人生を謳歌(おうか)している著名人たちに迫る「ライフ・イズ・ビューティフル」にリニューアルします。第1回は2022年にTBSを退社したフリーアナウンサー国山ハセンさん(35)。

現在は会社社長、ネットメディア会社のプロデューサー、投資家の肩書も持つ国山さんが、退社後初のスポーツ紙単独インタビューに応じた。(中西 珠友)

 「news23」や「アッコにおまかせ!」などTBSの看板番組を担当し、脂が乗ってきた30代前半での突然の退社は、視聴者を驚かせた。周囲からは疑問や反対の声もあったという。

 それでも国山さんが決意を変えなかったのには、テレビ離れの声がある世の中で、自分の職に対する将来に不安を感じたからだった。「ネット(メディア)とかSNSとかが台頭していく中で、自分がここから成長できるのか、やりたい発信の仕方ができているのかと疑問符がついたりマンネリ感だったりが出てきた」

 加えて、プライベートでも大きな節目を迎えていた。2022年2月に第1子となる男児が誕生。「(夜の)番組が終わって(家に)帰ると(子どもの)夜泣きもあって。それでも、次の日は朝起きて現場に行かなきゃいけなかった。単純にしんどかった」。ライフステージの変化で悩む国山さんに、妻が「メンタル的に楽しくなさそう。好きにやった方がいいんじゃない」と寄り添ってくれたことも後押しになったと振り返る。

 同年10月に退社を発表、12月に会社を去ったが、心が揺れることはなかった。

「やりがいはあったけど、もっと自分らしく伝えたい、自分らしく仕事がしたい。ちょうど丸10年になるし、一つの節目だなと思っていた」

 さっそく、23年1月からはビジネス映像メディアを運営するPIVOT株式会社の契約社員として“第二の人生”のスタートを切った。「自分でこうしたいというふうにキャリアを積んでいくタイプ。素直にやりたいことを実現するためにどうしたらいいんだろうってことを毎日のように考えていた。視野を広げていきたいとか、まだ自分ができないことを含めていろいろなことを経験したいというのが強かった」

 同社では制作番組の出演者としてだけではなく、番組のプロデューサー業にも従事。アナウンサー時代には経験することのなかった番組の企画、経費管理やキャスティングなど番組の裏側を学んだ。その経験が、25年2月のグローバルメディア「FOX UNION」の設立につながった。

 現在の主な事業内容は、YouTube番組「国山ハセンUnknown」を通じて、日米のスタートアップビジネスを発信すること。得意の英語を生かし、英語版のチャンネルも運営する。東京のほか、米サンフランシスコにもオフィスを置いた。

 イラク人の父、日本人の母の間に生まれた国山さんは、幼少期から海外を意識していたという。「世界に向けて発信するとか、海外でのプレゼンスを上げるとか、グローバルで活躍することが夢だった」と海外展開の理由を明かす。

開始から1年がたち、日本と米国を行き来する生活を送るが「アメリカの拠点をもう少し事業として成り立たせないといけない。アメリカで誰かと一緒に組んで発信していく現地リポートを、もっと頻度高くやりたい」と構想を描いている。

 事業運営には、当然費用がかかる。それを捻出しようと苦心を重ねたことが、国山さんの新たな“顔”の誕生につながった。それが投資家としての一面だ。

 投資にはTBS時代から興味があったという。「最初は24、25歳の時に物件を買ったというのが一番大きな買い物だった。その後も『給料の手取りが少ないな』みたいなところから増やしたいと思って勉強した」。本格的に投資を始めたのは退社の1年ほど前からだったが「僕自身の資金を増やしたいみたいな下心はあるけど、それだけじゃなくて投資を通して社会課題を解決できたりするのも醍醐(だいご)味」と魅力を力説する。

 自身の投資家体験を生かし、3月には「投資初心者の僕がプロたちから学んだ、正しいお金の増やし方」(徳間書店)を出版した。

 きっかけは、自身が出演するPIVOT制作の番組「MONEY SKILL SET」に元ゴールドマン・サックス証券の田中渓氏らをゲストに招いたことだった。

 「私自身が身銭を削って体感したことばかり。

皆さんが自分事として読める内容になっていると思う。(本が)投資を多角的に見たり学んだりするきっかけになれば」と願うが、反応は上々。「仕事でもプライベートの場でも『投資を始めてないから、読んでみたい』とか『(本が)分かりやすかった』という声を多くもらう」と喜ぶ。投資で注目が集まることには「まさか自分がこんなふうになると想像していなかったけど、意外にマッチしたなっていう感じがある」そうだが、「投資家」という肩書には「欲しいですけど、まだまだとても…」と笑った。

 アナウンサー、タレント、社長、投資家と多くの肩書を持つが、国山さんの仕事に対する軸はTBSに所属していた当時からぶれていない。「自分は発信者。映像で情報を伝えることは何も変わっていない」。局アナ時代から大切にする「現場が好きで現場に行って伝えたい、自分で見て取材して伝えたい、自分の言葉で伝えたいという思いは変わっていない」と強調する。

 今後の目標を「自分の憧れの人とか世の中を大きく変えている人がアメリカにいるので、将来インタビューできたり会うことができたら幸せ」。憧れの存在にはサッカーの元イングランド代表主将のデービッド・ベッカム氏、実業家のイーロン・マスク氏の名を挙げた。投資もまだまだ続ける予定。「ビッグになって、孫さんみたいに超大型投資をして、日米をつなぐ架け橋になるかもしれない」と夢を膨らませていた。

 〇…国山さんは、アナウンサーとしては昨年11月に開始したインターネット配信サービス「DOWNTOWN+」(ダウンタウンプラス)に出演中。生放送および「大喜利GRAND PRIX」の進行役を務める。現場の雰囲気は「お客さんもいるし、何より松本(人志)さんとやらなきゃいけないので、ものすごい緊張感がある」そうだが「新しいプラットフォームの立ち上げだったので絶対にやりたいと思った。新しいことに携わるのが好きなので、その一員になれてうれしい」と喜んだ。

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