現代社会の利便性と引き換えに、私たちは動物としての根源的な機能を失いつつある。前編では理学療法士で『絆創膏を貼るだけ睡眠』の著者・山内義弘氏と、「糖質から脂質へのシフトチェンジ」を説き、『なぜヒトは脂質で痩せるのか』(扶桑社新書)が発売即重版となった作家の金森重樹氏が睡眠について知見を交換した。
後編ではさらに踏み込み、人類が数百万年かけて培ってきた旧石器人としての生存戦略に焦点を当てる。

人類の狩猟採集時代の食生活は?

「快適すぎる生活」が不調を招く…識者2人が説く“旧石器時代に...の画像はこちら >>
――金森さんは、現代人が健康を取り戻す道は「旧石器時代の生活様式」に立ち返ることだと主張されています。その基本が食事ですが、具体的にはどうすべきですか?

金森 「糖を断ち、脂を摂る」のが大前提なのですが、その背景から説明しましょう。人類が狩猟採集をしていた頃、ご馳走は赤身の肉ではなく、ハツ・レバーなどの「命の源」といわれる内臓でした。12万年前のネアンデルタール人のドイツで発見された遺跡(脂肪工場)からは、骨髄を煮た跡を示す大量の骨が出てきています。彼らにとって「骨の髄」こそが最も効率的なエネルギー源であり、細胞を修復するための特効薬だったわけです。

山内 それは面白い。でも、現代日本人は骨髄を口にする機会なんてほとんどありませんね。

金森 だから、特に現代人はアミノ酸の一種であるグリシンが不足してしまっているわけです。グリシンはすじなどの結合組織、あるいは骨髄に豊富に含まれていますから、もっと食べた方がいい。民族誌が示唆しているのですが、ハツとレバーは地球上のどの狩猟採集民族でも特別な部位とされていた。ハツはコエンザイムQ10が多く含まれ、レバーはビタミンAや葉酸やB12が豊富です。狩猟採集民はこれを妊婦や子供に優先的に与えるルールがあったのは成長分化に不可欠だからです。


山内 グリシンはコラーゲンの主要成分でもあり、関節や皮膚の弾力に直結します。理学療法の現場でも、「組織の修復」という観点から栄養は無視できません。金森さんが推奨する内臓食は、物理的な体の強度を保つうえでも理に適っています。

金森 現代人は「タンパク質を摂ろう」と言って鶏の胸肉ばかり食べたりしますが、それでは成長を促進すると同時に老化する。旧石器人のように、修復寄りのコラーゲンを、脂と一緒に流し込むことです。

諸悪の根源は「快適すぎる環境」

――食事以外にも、旧石器人の知恵として寒冷負荷の重要性を説かれていますね。

金森 現代の住環境はあまりに快適すぎます。常に一定の温度に保たれた部屋にいることで、私たちの熱産生の仕組みは錆びついている。冬の冷たい水に身をさらしたり、薄着で寒さを感じたりする寒冷負荷は、ミトコンドリアを活性化させ、体脂肪を燃焼させる「ベージュ脂肪細胞」を呼び覚ます刺激です。

山内 私自身、コロナを機に富士の麓に移り、山中湖でその効果を身をもって実感しました。冬の厳しい寒さの中で活動すると、体の奥底から熱が湧き上がってくる感覚がある。普段の生活では決して使われない予備のエンジンが始動したような、あの独特の感覚は現代のトレーニングではなかなか得られません。

金森 それは山内さんの体が、旧石器人としての機能を取り戻した証拠ですよ。


――現代人は、そもそも甘やかされすぎているということ?

金森 はっきり言えば、食べすぎであり、快適すぎる。文明の進化によって我々は「飢えと寒さ」を克服しましたが、その代償として生きるために必要な刺激を失ってしまった。現代人の不調の多くは、過剰な栄養と過剰な快適さが招いたものです。この刺激=スイッチを強制的に再起動させる最も手っ取り早い方法が、飢餓です。

山内 飽食の時代に飢えろというのは、非常に逆説的でインパクトがありますね。

「快適すぎる生活」が不調を招く…識者2人が説く“旧石器時代に戻る健康法”
金森氏が主食としてよく口にするブリスケットを煮出したスープ。表面に浮いてくる透明な液体が良質な脂質だ


人類本来の機能を呼び覚ますことが大事

金森 人はそもそも、「何日も獲物が獲れない状況」に耐えられるように、設計されています。私が勧めるのは、最低でも48時間の断食です。24時間程度では単にインスリン抵抗性が下がるだけで終わりますが、48時間を超えるとアッカーマンシアなどの腸内細菌叢が増えて腸がリセットされると言われています。代謝が変わるだけではなく、免疫自体がリセットされるわけですね。逆に、飢餓を与えないから骨リモデリングによる入れ替えが働かず骨粗鬆症になるし、アルツハイマーも一因は糖代謝の破綻でしょう。「飢餓と宴」の周期的断食を習慣にするべきなんです。

山内 断食は私もおすすめしていて、感覚が非常に鋭敏になりますよね。
理学療法の視点から見ても、内臓の負担が減ることで背中の張りや腰の痛みが緩和される例は少なくありません。

金森 「3食しっかり食べることが健康の基本」というのは人類史的には最近の話です。人類400万年の歴史の大半は、空腹との戦いでした。だからこそ私たちのDNAには、飢餓の時にもっともパフォーマンスを発揮するというプログラムが書き込まれている。あえて食べない時間を作り、あえて寒い環境に身を置く。この旧石器人スタイルの実装こそが、あらゆる文明病を退治する神髄なのです。

山内 私の主張する絆創膏による身体調整術も、簡潔に言えば人間が本来持っていた機能を呼び覚ましているということに他なりません。金森さんのお話を聞いて、自分の中に眠る旧石器人の野生を信じることが、真の健康への近道だと改めて確信しました。

金森 不眠も、肥満も、倦怠感も、すべては人間本来の姿から離れすぎた結果です。まずは48時間の断食から、自分の体のスイッチを入れ直してみてほしい。

「快適すぎる生活」が不調を招く…識者2人が説く“旧石器時代に戻る健康法”
老若男女を問わず、さまざまな人の体を診てきた山内氏。Youtube「腰痛・肩こり駆け込み寺」は登録者数150万人を超える人気ぶりだ
山内義弘
1970年、名古屋市出身。理学療法士。
山梨県のAKA-専門病院で修業。そのテクニックをさらに進化・改良した山内流を開発。現在は、どこへ行っても治らない痛みの「最後の砦」として活動している。全国のセラピスト向けセミナー登壇、講演活動、オンライン配信など多岐にわたって活躍。YouTubeチャンネル「腰痛・肩こり駆け込み寺【山内義弘】」は2026年1月現在、登録者数150万人を超す。主な著書に10万部超『絆創膏を貼るだけ整体』『コリと痛みの駆け込み寺! のびちぢみ体操』(ともにKADOKAWA)

金森重樹
東京大学法学部卒。作家、監訳者、ビジネスプロデューサー。糖質ではなく脂質に着目した「断糖高脂質」により2か月で30㎏以上の減量に成功、そのメソッドを書いた「ガチ速〝脂〟ダイエット」シリーズは累計10万部を突破。近著に「なぜヒトは脂質で痩せるのか」(扶桑社)がある。「金森式」としてSNSで広く拡散され、大きな話題を呼んだ。「旧石器時代になるべく近い生活様式を現代で再現する」ことをモットーに、食事、サプリメント、歩行、睡眠などの研究にも余念がない。2026年現在、バヌアツ共和国で暮らす。


【金森重樹】
行政書士・不動産投資顧問。東京大学法学部卒。25歳のときに1億2000万円の借金を負うも、マーケティング技術を活用して35歳で完済。その後、行政書士として脱サラし、現在は不動産、ホテル、福祉事業など年商100億円の企業グループのオーナーに。マイナスから超富裕層へと這い上がる。「徹底して理詰めで事に当たる」のがモットーで、長寿やダイエットに関心を持ち、わずか2か月で90kg→58kgの減量に成功。その理論の根幹を成す「断糖高脂質食」をはじめ、栄養学や人類学にまで領域を広め「脂で痩せる」という独自メソッドのブラッシュアップに余念がない 。著書は『なぜヒトは脂質で痩せるのか』(扶桑社新書)、『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速”脂”ダイエット』、『ガチ速“脂”ダイエット 極上レシピ大全』『120歳まで元気に生きる 最強のサプリ&健康長寿術』。公式X:金森重樹@ダイエットonlineサロン@ShigekiKanamori
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