突然ですが、みなさんは宝くじが当たったらどうしますか?
豪遊する、投資に回す、借金を返す……妄想するのは自由で楽しいですよね。
ですが、合理的に考えれば、宝くじほど「コスパの悪い」ものはありません。
しかし、もし仮に「コストがほぼゼロで、絶対に損をしない宝くじ」があったとしたら?
いやいや、そんな都合のいい話があるわけない……そんな予想を裏切ったのが、先日発表された「北海道大学×JIG-SAW(ジグソー)奨学金」です。
北海道大学×JIG-SAW(ジグソー)奨学金とは
概要は極めてシンプル。「使途不問」「返済不要」の100万円が、抽選と選考を突破した4名に給付されます。応募にかかる時間はわずか1分程度。
もちろん、貰いっぱなしではなく、「サイエンスフェスタ2026(仮称)」での登壇報告を含む、定期的な研究進捗の報告が義務付けられます。
とはいえ、その程度の義務は、どの奨学金でも似たようなもの。
特筆すべきは、応募資格が実質「現役北大生」と非常に緩いにもかかわらず、「応募者多数の場合は、抽選等で先行イベント参加者を決定」すると明記されていること。
乱暴に言うなら「たった1分の応募で、100万円が手に入るかもしれないガチャ」。もはや、回さない選択肢はあり得ません。
「実質応募で100万円もらえるかもだなんて、すごい!」と感じられたでしょう。
しかし、「すごい!」だけで思考停止してしまうと、この奇妙な奨学金制度の背後に隠された、重要なリスクを見落としかねません。「うまい話に隠された裏側」を推測します。
企業が「タダでカネを配る」意味
日本一最低賃金が高い東京都ですら、たった1万円を稼ぐにしても朝から晩まで働かなければいけない。ましてや、100万円なんて……。
資本主義において「100万円」は巨額。これほどのカネを掴むには、とてつもない労力と知恵が要求されます。
だからこそ、冷静に逆算してみてください。利益を追求するマシーンであるはずの企業が、見ず知らずの学生に「タダでカネを配る」のはなぜか。
それは、必ず払った金額以上の「価値」を見込んでいるからではないでしょうか?
もっとも分かりやすいのは「広告」でしょう。
100万円を4人に配って、合計400万円。これで「使途不問の100万円ガチャをやるヤバい企業があるぞ」と北大生やSNS界隈で話題になるなら安いもの。
個人単位では大金ですが、企業の採用PRやブランディングの費用として見れば、400万円はむしろ破格レベルの安値なのです。
実際に、Xでは連日「北大宝くじ」として話題が沸騰していますから、「JIG-SAW社の広告」としてみるなら大成功といえるでしょう。
さらに、この「使途不問の100万円ガチャ」という座組みそのものが、JIG-SAWの掲げる「新たな挑戦」であり、「フロンティア精神」を強烈にアピールする材料になっています。
「うちは既存のレールに乗らない、こういう型破りなことを平気でやる会社だぞ」と言いふらすより、よっぽど自社のカルチャーを売り込める、極めて合理的なパフォーマンスです。
100万円の「限界」を知る者だけが勝つ
企業側が型破りなスタンスを見せている以上、当然ながら学生側にも「型破りな何か」が期待されていると察するべき。ただ単に「100万円でハワイに行って豪遊します」なんて凡庸極まりない発想なんて、企業は求めていません。
繰り返すようですが、やはり「100万円」は大金です。とはいえ、社会のスケールから見れば、100万円でできることはたかが知れている。
世界を変えるような本格的なディープテック起業にしろ、長期にわたる高度な研究資金にしろ、到底足りません。
つまり、たった100万円ぽっちで「デカいこと」を完遂するのはほぼ不可能。
となれば、このお金の最も賢い使い道のひとつは、「将来デカいことを成し遂げるための、スモールスケールな『実験』の資金」として捉えることでしょう。
選考の場において、企業側が見ているのは「僕はこれで世界を救います!」といった解像度の低い夢物語ではないはず。
むしろ「自分には巨大なビジョンがあるが、それを証明するデータがない。だから、『初期仮説』を検証する実験を打ちたい。
そのための機材費及び検証費として100万円が必要である」 といった、現実的かつ実践的な視点及び使い道を指摘できるかどうかでしょう。
己の無力さと100万円の限界を冷徹に理解した上で、いかに最もレバレッジの効く「一転突破の実験」に資金を投下できるか。
支払うものは「等身大の自分」かもしれない
実質的なノーリスクで100万円が手に入るかもしれないと聞けば「大チャンスだ!」とはしゃぐのも無理はありません。ですが、昔から「タダより怖いもの」はないと言います。
少なくとも、お金を払う側は、支払う先に対して、確実に100万円以上の価値を感じるからこそ、身銭を切る。
では、何も支払っていない、ただ運良く選ばれただけの「あなた」は、100万円を投資してくれた相手に、一体「何」を返せますか?
たった4名の候補者しかおらず、冬の「サイエンスフェスタ2026(仮)」での活動報告も義務付けられている以上、カネを受け取ったが最後、あなたは最早逃げられない。
名前を出して活動報告する以上、仮に企業の期待を下回ってしまえば、社会的信用へのダメージは甚大かもしれません。
確かに、お金の使い道は自由。だからこそ、「100万円をどう使うか」自体が、あなたの価値を間接的に表明してしまいます。
実は、「何も渡さずに」どころか、「等身大の自分とその未来」という、非常に大きな支払いを迫られる奨学金だと見てもいいのかも。
ここまで散々脅かしてきましたが、きっと今回想定されている奨学生とは、それでも、「100万円でこれがやりたい!」といえる熱い魂の持ち主。
何はともあれ、人のお金で夢へ近づけるのは間違いありません。覚悟を自らの内に見いだされたならば、ぜひ応募してみてはいかがでしょうか?
<文/布施川天馬>
―[貧困東大生・布施川天馬]―
【布施川天馬】
1997年生まれ。
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