市川染五郎(21)が歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」(26日千秋楽)で、初役を含む3役に奮闘している。初代中村吉右衛門の功績を顕彰するため、2006年に始まった秀山祭は20年の節目。

理想とする祖父・松本白鸚(84)に近づけるよう精進している染五郎の胸の内に迫った。(有野 博幸)

 夜の部「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」で染五郎が初役で勤める一條大蔵卿は、初代吉右衛門が愛着を込めて「最も好きな役」に挙げた役だ。作り阿呆(あほう)で源氏再興の思いを隠し、公家としての気品、鷹揚(おうよう)とした雰囲気の中にも武士の血筋らしい勇ましさも求められる。

 染五郎は「身に余る大役」と恐縮しつつ、「まだ早いと言い続けるのは、自分への甘えになる」。父の幸四郎から稽古で教わり「播磨屋の匂いまでも体現できるように、生涯をかけて追い求めていく課題」と気持ちを奮い立たせている。大蔵卿が本性を明かす場面では、ぶっ返りで舞台を華やかに彩り、喝采を浴びている。

 5~6月に出演した舞台「ハムレット」の経験を生かしている。初代吉右衛門が一條大蔵卿にハムレットの心境を取り入れた逸話が残っており、染五郎は「2人とも高貴な身分で恵まれて見えるけども、胸の内を誰も分かってもらえない孤独感、寂しさを抱えている。お客様に哀愁を感じてもらうのが、目標です」と思いを込めた。

 祖父の白鸚が憧れであり、理想とする存在だ。祖父の芸を見る度に「この人は本当に主役をやる人なんだな」と感じるという。

 「高麗屋は代々、時代物の主役をやってきた。

自分も、そこを目指すのなら、そういう役者にならないといけない。将来的に高麗屋の芸を体現できるように、ならなければ」と進むべき道を明確に見据えている。

 〇…染五郎は昼の部「春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)」と「ひらかな盛衰記 逆櫓」で「同世代で刺激を与え合っている2人」という市川團子(22)、尾上辰之助(20)と共演して「染團辰」がそろい踏み。幸四郎は息子の染五郎に「大きなチャンスをいただいているのは、幸せなこと。チャンスは待ってくれないから、来た時にどうつかめるかが大事。体当たりで突き進んでもらいたい」と期待を寄せた。

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