映画監督の塚本晋也氏が20日、都内で行われた映画「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」の凱旋舞台あいさつに登壇した。

 本作は、ベトナム戦争に派兵された元米海兵隊員アレン・ネルソン氏の実話を映画化した戦争映画。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱え、帰国後にホームレスとなったネルソン氏が、戦場で犯した過ちを告白し、戦争の実態を伝える活動を通じて救いを見いだしていく姿を描く。

 「野火」「斬、」「ほかげ」に続き、塚本監督が加害者の視点から戦争の恐ろしさと、拭いきれない痛みを描いた。ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、日本映画として初めて、同映画祭の独立賞の一つ「レオンチーノ・ドーロ賞(金の小獅子賞)」を受賞した。審査員を務めた18歳の高校生20人が選出した。

 おととい帰国したという塚本監督は「若い人に見ていただきたい。この映画を作った一番の目的としては、若い人たちに戦場に行ってもらいたくない。頭で考えるのではなくて、体で戦争の恐ろしさを実感してもらいたいと考えていたので、それが届いていたのかなという気持ちになりました」と語った。同映画祭会場に赴き、高校生たちが作品を受け止めている姿を目にした際には「相当感動して、うれしかった。一番のポイントになった」と振り返った。

 原作は、ネルソン氏が著した「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」「戦場で心が壊れて」。原作を忠実に再現していく中で、特にこだわった場面が2つあるという。その1つが、村人を殺害し、ベトコンをおびき寄せようとするシーン。

「この映画で一番恐ろしい。もしかしたら、作っている過程でやめてくれと言われる可能性もあると思ったが、これは欠かせない。これが撮れないんだったら、この映画を作る意味がないかもと思っていたのですが、ご理解いただいた」と明かした。

 もう一つは、PTSDという言葉が確立する前、戦場での体験による暴力性が家族に向けられ、連鎖していった。「戦争としての形は終わっていても、人としての暴力性の連鎖が止まらない。そういうものをきょう見た方に感じていただきたい」と語った。

 最後に「いま、世界がきな臭くなってきて、日本もその流れにのみ込まれ、憲法も改正されようとしている。戦争に行くということは、若い人がこの映画のようなことを体験するようになると思ってから、その先のことを議論していただけたら」と訴えかけた。

 タイ、ニューヨーク、日本、ベトナムの4か国で撮影を敢行。主人公のアレン・ネルソン役には、ブロードウェーミュージカル「RENT」のオリジナルキャストであるロドニー・ヒックスを起用した。ネルソンを支えるニール・ダニエルズ役は、「シャイン」「英国王のスピーチ」などに出演したジェフリー・ラッシュが演じる。リリー・フランキーも出演する。

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