馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はマイネルラヴが勝った1998年のスプリンターズSを取り上げる。

単勝1・1倍、圧倒的な人気を集めたラストランのタイキシャトルが3着に敗れ、7番人気の伏兵マイネルラヴがG1初制覇。まさかの結末に衝撃が走った。

 激しい戦いは4コーナーからゴールまで、約350メートルは続いた。マイネルラヴは外、内にタイキシャトル。坂を上がりマイネルラヴが突き放しにかかる。横綱の意地か、シャトルも簡単には引き下がらない。だが、最後は若さが優った。3歳のマイネルラヴがグイと抜け出て、疾風のように襲いかかってきたシーキングザパールを頭差抑えた。

 歴戦の古馬たちを倒してのG1初制覇。稲葉調教師は素直に喜んだ。「国際G1ホース(タイキシャトル、シーキングザパール)の2頭を負かすとは…。レース前に調教師仲間と、同じ競走馬だから差はないはずと笑って話していたんだ。

それが現実になるなんて…。ジョッキー(吉田)もうまく乗ってくれた」と笑顔一杯だった。

 この秋G1・2勝目の吉田豊は今回初めてのコンビ。「この相手に勝てるなんて…。やった!という感じ。先生(稲葉調教師)から、スタート直後は気合をつけて、あとは馬なりでと指示を受けた。4コーナーでタイキシャトルに頭ほど出たが、そのあともよく我慢してくれた」と相棒をたたえた。その後、00年12月まで現役を続け、99年のシルクロードSを勝った。引退後は北海道・静内町のビッグレッドファームで種牡馬入りし、2012年に天国へ旅立った。

「気持ちが空回りしていた」名手・岡部の表情もうつろ ラストランで初の連対圏外

 歓声が驚きに変わり、大きなどよめきが中山競馬場を包んだ。「まさか」のシーンが現実に目の前で繰り広げられた。4コーナー。

史上最強マイラーのタイキシャトルは、岡部が手綱を絞ったまま、先頭に躍り出る勢い。直線は独壇場と思われた。

 マイネルラヴが外から並びかけてくる。だれもが、あっさり突き放すものと信じていた。ところがだ。いつものナタで切り裂くような伸び脚が見られない。そればかりか、ゴール前では大外から強襲したシーキングザパールにも屈して3着。有終の美を飾ることはできなかった。

 「気持ちが空回りしていた。いつもは、もう少し楽に走るんだけど、肩の力が抜けていない感じだった」。岡部の表情がうつろだ。これまで12戦11勝、2着1回。

無敵の王者がついに敗れた。藤沢和調教師も「もう走りたくなかったのか、ファイトがなかった」。最後の最後に連対記録も外して、どこか寂しげだった。

 来年からは北海道・静内のアロースタッドで種牡馬として第二の“人生”を迎える。最終レース終了後に行われた引退式には、約4万人のファンが最後の雄姿を目に焼き付けようと残った。「ご苦労さん」「お疲れ~」。名馬に温かい声援が飛んだ。「時期的にも(引退は)いいタイミングだと思う。ご苦労さんというのが本心」と藤沢和調教師。鍛えに鍛えて得た傑作へ別れを告げた。

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