◆プロボクシング ▽WBC世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇王者・井上拓真(判定3―0)同級1位・那須川天心●(9月27日、トヨタアリーナ東京)

  WBC世界バンタム級1位・那須川天心(28)=帝拳=が王者・井上拓真(30)=大橋=に敗れ、王座獲得はならなかった。昨年11月24日の王座決定戦での判定負けから307日ぶりの再戦で、再び拓真に屈した。

無敗のキック王者だった神童が、ボクシング転向10戦目で同じ相手に2連敗。7回にはダウンを奪ったが、ボクシング人生の現在地を改めて突きつけられた。

 最終12回を終えてゴングが鳴ると、勝利をアピールするかのように拳を高く掲げ「天心」コールが響く中で結果を待ったが、ジャッジは勝利をつかむことはできなかった。採点はジャッジ1人が114―113、2人が116―111と5ポイントの差をつけられた。リングから降りると悔し涙が止まらなかった。

 「本能で戦う」と宣言して臨んだ雪辱戦。研ぎ澄ました感覚を攻防に込めてぶつかったが、熟達の王者の技巧を崩し切れなかった。再戦へ向け「崖っぷちな状況」と自認しながらも、「強いヤツに挑むのが俺の人生。それが本当のプロ」と拓真への雪辱にこだわってきた。

 再戦までの307日間。「一日も無駄にしなかった。ボクシングと誠実に向き合った」。

昨年11月の敗戦後、キック時代にボクシング指導を受けていた元帝拳ジム・トレーナーのGLOVESジム・葛西裕一会長(56)とのコンビを再結成。「ヌルヌル」と表現する切れ目のない動きに磨きをかけた。天心自身も「体がうまく使えるようになった。パワーをパンチに乗せられるようになった」と手応えをつかんでいた。

 さらに週に一度は、古巣TEPPENジムの会長でもある父・弘幸氏(56)のもとにも足を運び、過酷な練習を積んだ。弘幸氏は「前回負けた原因は気持ちだけ。技術で負けたわけじゃない。練習してきたことと気持ちがかみ合えば、最高の試合ができる。精神的にも徹底的に追い込んだ」と話した。

 同門のWBAバンタム級王者・増田陸(29)=帝拳=は「天心は目が良く、巧緻(こうち)性に長けていて、瞬発力もある。どこに足を置くか、最小限の動きでパンチを外す、そういう技術やポジショニングが非常にうまい」と評価。その上で「さらにこの1年で、ボクシングの“純度”が上がった。

これまでは格闘技のポテンシャルでやってきた部分があったと思うが、より“ボクサー”になった。ひとつひとつ、微妙な違いだが、アジャストしてきている」と証言した。

 進化の確信を携えて臨んだが、王者の牙城はなお高かった。「僕が勝った方がボクシング界は面白くなる」。そう言い続けてきた天心の挑戦は、再び頂点を目前にして足踏みすることとなった。

 那須川天心「悔しいっすよ。悔しくて。めっちゃ悔しいすよね。これだけやっても無理かって。今も、もう何がなんだかわかんないっす。ここまで本当に、毎日、ここまでこんだけやっても無理かっていうのを、自分思いますよね」

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