――2023年度の振り返り

マルハニチロ、麺類・米飯・惣菜を拡大、「新中華街」シリーズ好調/金谷市販用冷凍食品部長インタビュー
マルハニチロ加工食品ユニット市販用冷凍食品部・金谷信一郎部長

市販用冷食事業が属する加工食品ユニットの業績は、売上高が前年比15億円増の989億円、営業利益が22億減の17億円となった。市販用冷食だけで見れば、値上げの影響と、広島工場の火災の影響で全体として数量が減少したが、2022年8月から群馬工場で冷凍麺の新ラインが稼働したことで、麺類の拡大を施策として打ち出し、売上高としてはほぼ前年並を確保できた。

一方で営業利益は、食材やエネルギーの相場高騰と為替の影響も大きく、コストが増加し、2022年2月、8月、2023年2月に値上げを実施したもののカバーしきれず、減益となった。


カテゴリー別では、「新中華街」シリーズは主力の「横浜あんかけラーメン」「五目あんかけ焼そば」「あおり炒めの焼豚炒飯」を中心に好調だった。特に「五目あんかけ焼そば」については、2022年夏まで生産能力の課題から、十分に需要に応えることができなかったが、群馬工場に生産体制を整えたことで大きく伸ばすことができ、麺類の伸長が全体をけん引した。

弁当品に関しても「えびとチーズのグラタン」をはじめ主力品が好調だったほか、凍菜も年間を通じて売上が前年を上回り、広島工場の火災の影響を受けた中華カテゴリー(シュウマイ)を除けば総じて好調だった。

直近の新商品では、2022秋に発売した「海鮮あんかけ焼そば」、2023春に発売した「牛肉オイスターソース焼そば」は動きがよく、新たな柱に育成していきたい。

また、弁当品はある程度アイテムを絞って新商品を投入しているが、2023春の「鶏タル!ブラックペッパー味」は近年の弁当品の新商品の中でも、非常に動きが良い。

――前期の重点施策と成果


前述の麺類の拡大および、米飯や惣菜類の拡大を目指した。特に注力する麺類では、タレントの横浜流星さんを引き続き起用した「五目あんかけ焼そば」「横浜あんかけラーメン」のTVCMを202年10月に放映。
特に前者では新CMを放映した結果、放映期間中において単品としては過去最大の出荷を記録することができた。配荷も拡大し、大きな成果を得られたと感じている。

米飯では、「WILDish」で2022年に引き続きeスポーツチームに協賛し、同品のターゲットである若年層の方々に響くような施策を実施した。また、弁当品では人気キャラクター「すみっコぐらし」とコラボしたプレゼントキャンペーンを実施し、いずれも売上は堅調に推移し、効果を実感できた。

――足元の市場環境について


2022年は値上げが度重なる状況の中で、売上は順調なものの数量面では厳しかった。2023年はコロナ禍が落ち着いてきたところで、値上げの影響もあって冷凍食品市場は苦戦するのではないかと見ていたが、引き続き即食系商品を中心に比較的堅調に推移している。コロナ禍以降、冷凍食品のおいしさ、簡便性が知られ、裾野が一層広がったことで、大きく減少しない環境になっているのではないか。
冷食売場も拡大している中、冷凍食品市場は今後も拡大していくと見ている。

また、食品の値上げラッシュが続く中で弁当品の動きが良くなってきている。外食も値上げが続き、ランチの価格も上がってきている。節約志向の高まりの中で、お弁当を作る人が増え、重宝されてきているのではないかと見ている。

――値上げの進捗や影響等


市販用冷食では2022年2月、8月の2回に2023年2月と計3回値上げを実施した。2022年春は久々の値上げということもありご理解いただくのに多少時間を要したケースもあったが、その後は状況をご理解いただけるようになった印象がある。

ただ、以前の価格と「値ごろ感」のラインが変わってくることにはなるので、今春の棚替え以降の数量・売れ行きにどのような影響が出るかについて注視したい。


一方で我々も品位や簡便性、ブランド力などを向上させるなど価格に見合った価値を認めていただく努力をしていかねばならないと思う。

〈シュウマイは7月販売再開、強い商品増やし生産性向上を〉

――今期の市販冷食事業での重点施策


まずカテゴリーとしては、前期に引き続き麺類の拡大を図るとともに、惣菜・ピザでも取り組みを強化したい。麺類では主力の「横浜あんかけラーメン」「五目あんかけ焼そば」を中心に販促活動を含めて注力するとともに、他にも商品を拡充するなどして強化したい。

惣菜も市場で成長性の高いカテゴリーであり、「極旨!ももから揚げ」および「BIG DELIcious」を中心に注力していきたい。「極旨!ももから揚げ」は当初500gで展開していたが、2023春に300gの規格も追加した。エリア特性なども考慮しながら展開していく。同品は2021年8月の発売から2年ほどだが、おかげさまで品位面の評価も高く、固定ファンも獲得できていると実感しており、もう一段高いところを目指したい。


店頭施策では、和田アキ子さんを起用した「BIG DELIcious」のTVCMに合わせての試食販売なども一部で展開した。コロナ禍の最中も、実際に試食していただきたい商品がほかにもあったができなかった。販売店様のご理解あってのことだが、ぜひ有効に活用したいと思う。

――御社の課題とその対応


コロナ禍を経て業界の売れ筋カテゴリーが大きく変わってきている中、当社は弁当品の構成比が高く、麺、惣菜、即食品といったカテゴリーの商品はまだまだ伸ばせると考えており、構造変化を図っていきたい。

もちろん弁当品も重要なカテゴリーだと認識しており、こちらも伸ばしたい。以前も話したが、近年、弁当品は新商品が減少し、売場が売れ筋商品に集中する傾向があり、もう少しお客様が選択できる売場になっても良いのではと思う。そういう意味では、今春の「鶏タル!ブラックペッパー味」は好調であり拡大したい。

――広島工場の影響を補う施策と、生産面での動向


広島工場はシュウマイ類全般と、弁当品で「牛カルビマヨネーズ」「肉巻きポテト」といった主力品を生産していたため、火災の影響は大きい。このうち弁当品に関しては、代替商品となる「牛カルビマヨ」「ポテト肉巻き」を、2023春から自社の他工場で生産を開始した。ただ、生産能力の都合から共にエリア限定での販売となっている。生産能力を増強し、今後の販売地域拡大を目指したい。

シュウマイは、協力工場にて生産し「あら挽き肉しゅうまい」の販売を7月より再開する。生産面では、今後加速していく人口減少とそれに伴う労働力不足という問題があり、省人化に向けた取り組みは重要な課題と認識している。設備の導入だけではなく、既存ラインをいかに効率よく稼働させられるかということも重要であり、それに向けた取り組みを強化していく。

――市販冷食事業の中長期的方向性


繰り返しにはなるが、成長性が高いカテゴリーでの商品育成、強い商品を増やし、生産性を高めていくこと。また営業マンの作業効率改善に向けても、いろいろ模索しているところだが更に進化させていきたい。

また、既存主力商品の調理手順の簡便化や、脱プラなどの環境配慮に向けた取り組みにも注力していく。

〈冷食日報2023年7月12日付〉