日本マクドナルドは、改正労働施策総合推進法により10月1日から事業主にカスタマーハラスメント対策が義務付けられるのを前に、店舗での対応を個人任せにせず、責任者や組織につなぐ体制を強化する。
正当な意見や要望にはこれまで通り真摯に対応する一方、人格否定や土下座要求、不適切な撮影、長時間にわたる要求などは、状況に応じて組織対応に切り替える。
9月16日にパシフィコ横浜で開催した全国の店長やフランチャイズオーナー、サプライヤ―などマクドナルドファミリー向けの社内イベント「Japan Smile Convention(JSC)2026」で、カスハラ対策をテーマにトークセッションを実施した。
農林水産省大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課の森幸子課長を招き、「お客さまを大切にすること」と「従業員を守ること」の両立について、具体例を交えて説明した。
森課長は、カスハラは個別の店舗だけの問題ではなく、働く人の尊厳や安全・安心を守り、事業を安定して運営する上でも社会的な課題になっていると説明。不当・悪質なクレームや過度な要求によって従業員が精神的な負担を受け、現場で1人で抱え込むケースがあるとした。
農水省の「飲食店のためのカスタマーハラスメント対策ガイドライン」では、飲食店で起こり得る言動を「暴力」「侮蔑・暴言」「恐怖・威圧」「無関係・不当要求」「長時間化」「繰り返し」「コミュニケーション不成立」の7類型に整理している。
正当な意見や要望は、店舗運営の改善や新しい商品・サービスにつながる貴重な意見である一方、社会通念上許される範囲を超える言動で従業員の就業環境が害される場合は、組織で対応する必要がある。
〈「現場では迷う」、3事例で対応の切り替えを確認〉
店舗では、混雑状況や人員配置、客とのそれまでのやり取りなどによって、正当な意見・要望とカスハラの線引きに迷う場面もある。セッションでは「現場では迷う」ことを前提に、どの段階で通常の顧客対応から責任者や組織による対応へ切り替えるかを、3つの事例で確認した。
一つ目は、オーダーミスをきっかけに侮蔑的な言動や不当な要求を受けるケース。注文と異なる商品を提供したり、商品を入れ忘れたりした場合、その申し出自体は店舗が真摯に受け止めるべきものとした。
森課長は、店舗側にミスがある場合は事実を確認し、必要に応じて謝罪した上で、店舗のルールに沿って可能な対応を示すことが基本と説明した。一方、解決策を示しても、従業員の人格や能力を否定する発言、退職を迫る言動、土下座など過度な謝罪の要求、個人情報の開示要求などがあれば、商品に関する問題とは切り分けて対応する必要があるとした。
セッションでは、1人のクルーに対応を続けさせず、マネージャーへの引き継ぎや複数人での対応に切り替え、相手の発言や店舗側が説明した内容を記録することも重要とした。
〈SNS撮影は「現場で不安の声」〉
二つ目は、不適切な撮影やSNS投稿を想定したケース。セッションでは、近年、現場で不安の声が上がりやすい事例として取り上げた。
撮影そのものの是非は店舗のルールや状況によるが、従業員や他の客の安全・安心、プライバシー、店舗運営に影響がある場合は、店舗側から必要な説明をし、協力を求める必要があるとした。
それでも協力が得られず、威圧的な言動や同じ行為が繰り返される、説明を聞かずコミュニケーションが成立しないといった場合は、責任者につなぎ、組織で対応することが重要とした。マクドナルドでは、時間帯責任者やシフトマネージャーへの引き継ぎ・報告を行う。
三つ目は、商品提供の遅れをめぐり、やり取りが長時間化するケース。
待ち時間への不満や確認は正当な意見・要望として受け止め、店舗側が状況や見込み時間、可能な対応を説明する必要がある。一方、説明や提案をしても同じ要求が繰り返される、質問が長時間続く、責任者が対応しても終了できない、他の客や店舗運営に大きな影響が出るといった場合は、通常のクレーム対応の範囲を超えている可能性があるとした。
カスハラかどうかは、声の大きさや表情などの印象だけで判断しない。店舗が何を説明し、どのような対応を示したか、その後も言動が続いているか、従業員や店舗運営に影響が出ているかを確認することが重要とした。
〈店舗独自ではなく、会社共通のツール活用〉
日本マクドナルドは今後、店舗マネージャー向けのカスタマーハラスメント対応ガイド、クルー向け情報などを配信する予定。
森課長は、会社として店舗向けガイドや相談への動線、記録・報告の仕組みを整える重要性を指摘。









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