災害大国の日本。南海トラフ地震、首都直下地震などへの注意喚起がされる昨今、災害時の備えの大切さがより重要視されています。

いざ発災した際には、地域の助け合い、すなわち「共助」が大切になるといいます。そこで今回は、いざという時に街や地域の防災で重要な役割を担う「消防団」にフォーカスしてみました。同じ街に住む人たちで編成するのが消防団。地域に根ざしたユニークな活動を行っている団もあるといいます。きっと快適に暮らせる街探しの一助にもなるはずです。

そもそも消防団ってどんな組織?資格は?報酬は?

「消防団」という言葉は知っていても、公務員である消防署の職員との違いや実際の活動内容など、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
消防行政に詳しい関西大学教授の永田尚三(ながた・しょうぞう)さん(以下永田さん)に聞いてみました。

「消防団は、消防組織法に基づき、それぞれの市町村に設置される消防機関です。消防署は専門の職員(消防士)による消防活動ですが、消防団は地域に暮らす一般市民が参加する組織です。団員は、普段は仕事や学業、家事などをしながら、地域の人々の安心と安全を守る重要な役割を担います。ボランティアのような性質を持っていますが、法的には非常勤の特別職地方公務員となるので、責任ある活動が求められます。活動に必要な装備や報酬は各自治体から支給されます。常勤の消防職員が勤務する消防署とは違い、火災や災害が発生した場合、自宅や職場から現場へ駆けつけ、その地域での経験を活かした消防活動を行います」(永田さん)

意外と知らない”消防団”の世界。月額報酬や家賃補助も!? 金銭的メリットとリアルな活動

意外と知らない”消防団”の世界。月額報酬や家賃補助も!? 金銭的メリットとリアルな活動

専門職である消防士と訓練を行ったり、災害時なども連携して消防活動を行う(写真/PIXTA)

ちなみに報酬の目安は年額3万6500円ほど。

それに加えて、出動ごとの手当もあり、1回出動につき8000円ほどになっているといいます。「消防訓練の日当がある消防団もあり、その場合、だいたい1回あたり4000円ほどが多いようです」(永田さん)

入団は決してハードルが高いわけではなく、18歳以上で健康な方であれば男女を問わず誰でも資格があります。居住エリアや勤務先・通学先を管轄する消防団に所属することになります。

1950年代前半には全国で200万人を超える人が団員として活動していたといいますが、少子高齢化で年々団員数は減少している状況だそう。若い世代の担い手不足が課題のひとつとされています。

2024年10月1日現在、全国の消防団数は2174団、消防団員数は74万9680人(公益財団法人日本消防協会調べ)であり、消防団は全ての市町村に設置されています。

高齢化や過疎化により消防団の存続ができないような地域もあります。そうした地域では、近隣自治体の消防団がカバーをする形で地域防災を担っています。ただ、エリアが広範囲になることも多く、厳しい現状にあえいでいる自治体も年々増えているといいます。

<消防団の基礎知識>
●報酬:年額3万6500円ほど(出動手当が別に1回8000円ほど)
●法的な位置づけ:非常勤特別職の地方公務員
●入団資格:その自治体に居住もしくは働いている18歳以上の男女

消防団組織は「自らの地域は自らで守る」という郷土愛護の精神に基づいています。消防署に勤めている消防士とは違い、18歳以上であれば誰でも入団することができます。

では、実際にどんな活動があるのかというと、大きく<災害時の活動(有事)><平常時の活動(平時)>の2つに分けられます。

<災害時>では、消火活動(火災現場での消火、延焼防止)、救助活動(住民の避難誘導、救助)、水防活動(大雨時の土のう積み、河川の警戒)、情報収集(現場の状況確認と報告)といった役割があります。

また、<平常時>では、訓練(消火などの訓練)、消防機材の点検、救命講習などに加えて、火災予防運動期間中の広報、夜間の見回り。さらに、お祭りなどのイベントでの警備や警戒など、地域貢献活動で活躍が期待されます。

意外と知らない”消防団”の世界。月額報酬や家賃補助も!? 金銭的メリットとリアルな活動

意外と知らない”消防団”の世界。月額報酬や家賃補助も!? 金銭的メリットとリアルな活動

地域の祭事など人が集まるタイミングで防災啓発活動を行うのも役割のひとつ(写真/PIXTA)

「活動を通じて同じ街に住んでいる人、会社といった地域とのつながりを感じられて、その街への愛着も深まるといった点が大きなメリットと言えるでしょう。また、防火パトロールなどの活動を通じて、AED(自動体外式除細動器)や消火器の設置場所、川や海などが近い街の場合は洪水が発生しそうな危険な箇所などがないかなどを確かめることができます。避難場所や経路なども含めて、万一の際のリアルな情報が手に入るのも参加する意味のひとつになるでしょう」(永田さん)

さらに、消防団に入団すると割安な家賃で家が借りられる自治体があったり、企業よろしく福利厚生を充実させた消防団などもあるといいます。金銭的なメリットも意外とあるのですね。

一方、年間にかなりの回数の訓練を行うことで団員が疲弊して辞めてしまったり、新しい団員確保に苦戦する自治体も多いといいます。「どのくらいコミットするのかは消防団によってまちまちなので、入団を希望する場合はよく調べてからにしましょう」(永田さん)

全国には個性的な消防団がたくさん。一部を紹介します

年々消防団員が減っている中、個性的な取り組みで地域消防に貢献している消防団がいくつもあります。全国の消防団に詳しい永田さんにいくつかピックアップしてもらいました。

<カミゴウ消防団>個性的な認知度アップ施策が面白い消防団

正式名称は海老名市消防団第五分団。海老名市上郷・扇町・めぐみ町を管轄していることから“カミゴウ消防団”が愛称となっています。

団員数確保となにより地域の身近な消防団ということをPRするために全国的にも例がない取り組みを行い、「まさに地域の人気者といった珍しい消防団だと思います」(永田さん)

消防体験イベントやこども一日分団長など消防に直結するような取り組みはもちろん、イルミネーションイベントや街なかで消防団を見つけるイベントなどを開催。特にユニークなのが、団員が主役となった団員カードの作成です。
まるで団員一人ひとりがヒーローのように感じられ、キャラクター色をもたせることでより消防団を身近に感じることができます。カード以外にもTシャツやコースターなどオリジナルグッズを手掛けたり、LINEやInstagramなどで積極的に情報発信。また、近隣の救急救命学科のある専門学校と連携して、学生消防団員も募集しています。

こうした取り組みが評判を呼び入団する団員が増加。11人だった団員も定員の15人を超え、2025年7月時点で18名までに増加したといいます。また、公式LINEや各種SNSのフォロワー数も全国の消防団の中でも上位を占めるなど知名度は全国区に。今後の活動についても大きな興味を集めています。

意外と知らない”消防団”の世界。月額報酬や家賃補助も!? 金銭的メリットとリアルな活動

平常時は年3回ほどの訓練のほか資機材の点検や市内で行われるイベントの警備を担当。もちろん実際の災害時には地域の安全を守る活動を行っている(画像提供/カミゴウ消防団)

意外と知らない”消防団”の世界。月額報酬や家賃補助も!? 金銭的メリットとリアルな活動

SNSを活用した情報発信も活発。目を引く取り組みばかりで、地域の消防意識を高めることにも寄与しています(画像提供/カミゴウ消防団)

意外と知らない”消防団”の世界。月額報酬や家賃補助も!? 金銭的メリットとリアルな活動

Tシャツや缶バッジ、マグカップやトートバッグなどユニークなオリジナルグッズも多数展開(画像提供/カミゴウ消防団)

<松山市消防団>郵政職員、大学生、事業所など属性で構成を分け、機能別に活動

通常の消防団とは別に「機能別の団員構成制度に早くから取り組んでいる消防団です」(永田さん)。具体的には地域に精通する郵政職員で編成する「郵政消防団員」、若い力を活かす「大学生等消防団員」、地域の事業所が対象の「事業所消防団員」です。

「郵政職員であれば普段の業務から地域の地理的状況を把握していたり、地域住民と日ごろから触れ合う機会が多いことから、効率的な避難誘導もできます。

また大学生のような若い人たちに、早くから消防関心を持ってもらうことで、将来の地域防災の担い手になることも期待できます。大学生側も同世代同士で参加もしやすいでしょうし、例えば就職活動でも、こうした活動を通じた経験をアピールできるという側面があります。

地域にある事業所と共に活動することで、なかなか動きにくい平日日中の空洞化をカバーできるというメリットもある。特性を活かした構成にすることで地域防災力を高めている好例といえるでしょう」(永田さん)

その他、女性分団も組織され、火災予防や地域活動における防火広報、一人暮らしの高齢者宅等への防災訪問などを担当。さらに内閣府が主催する避難所支援リーダー/サポーター研修に参加し、いざという際の避難所開設や注意点についての知識や実践力を高め、災害が発生した際にスムーズに役割分担ができる仕組みを整えているのも特徴です。

もう一点、消防団内にバイク運行の精鋭部隊、通称「赤バイ隊」を編成。目を引くカラーリングで普段は防火広報活動で大きな力を発揮し、万が一の災害時には二輪車特有の機動力を生かした情報収集や避難誘導を行います。

意外と知らない”消防団”の世界。月額報酬や家賃補助も!? 金銭的メリットとリアルな活動

松山市消防団の赤バイ隊(画像提供/松山市消防団)

意外と知らない”消防団”の世界。月額報酬や家賃補助も!? 金銭的メリットとリアルな活動

女性分団や大学生等消防団員は、防災訓練など地域防災活動で市民に対して災害時に発生する怪我などへの応急手当訓練を行ったり、避難所開設訓練など後方支援活動を担う(画像提供/松山市消防団)

意外と知らない”消防団”の世界。月額報酬や家賃補助も!? 金銭的メリットとリアルな活動

公式Instagramには消防団がどんな活動をしているのか、やりがいなどがわかるオリジナル漫画も(画像提供/松山市消防団)

「消防団は地域防災の要。共助の力が高ければ、安心して快適な暮らしができる街に」

地域に根ざした組織である消防団は、災害発生時に真っ先に対応してくれる心強い組織です。消防団の充実が安心安全な街かどうかの指標のひとつになるでしょう。
また、「消防団は地元密着である分、仲間やコネクションをつくることができることも大きな特徴です。

仕事以外にも活躍の場を広げたい、さまざまな分野の人とつながりを持ちたいという人は、自分が住んでいる地元でそれを叶えられるというメリットがあります」と永田さん。

もちろん防災の知識が身につき、自分や大切な家族を守ることの具体的な方法がわかるようになります。何より街の人たちと一緒に活動を楽しむことができれば、街への愛着が自然と湧き出てきて、心が充足した暮らしも実現しやすいのではないでしょうか。

理想の街探しにはさまざまな視点がありますが、防犯防災、そして住む街を愛せるかどうか。こうした点を重視するならば、希望エリアの消防団を調べてみてはいかがでしょう。もしかしたら、その街の魅力の一端に触れることができるかもしれません。

●取材協力
・関西大学 社会安全学部 教授 永田尚三さん
・カミゴウ消防団(海老名市消防団第5分団)
・松山市消防団
公益財団法人日本消防協会調べ

編集部おすすめ