イーロン・マスク氏率いるスペースXの躍進で、宇宙開発は加速しています。開発主体は国家から民間にシフトしつつあります。
宇宙開発の最先端を走るスペースX
宇宙産業は、私たちの生活に不可欠のものとなりました。通信、放送、測位(GPS)、気象観測など、私たちが日常的に使うサービスに深く関わっています。
防衛面(軍事目的)でも重要となっています。米国・イスラエルなどがすでに軍事目的(精密攻撃・攻撃用ドローン誘導など)で活用していることも知られています。
その全てで重要な役割を果たしているのが、テスラ創業者イーロン・マスク氏が創業したスペースXです。スペースXは、以下二つを成し遂げたことで、現時点で宇宙インフラを支配して宇宙開発の最先端を走っている企業と言っても過言ではありません。
【1】「再利用ロケット」のパイオニアとして圧倒的な低コストで高頻度のロケット打ち上げを実現
通信、放送、測位(GPS)、観測など宇宙産業が提供するサービスは、ほぼ全て人工衛星を介して提供されます。その人工衛星を、衛星軌道まで送り届けるのはロケットの役割です。スペースXが安価に大量のロケットを打ち上げられるようにしたことで、世界中で宇宙ビジネスが加速しました。
【2】低軌道(地上400~2,000キロメートル)に1万基以上の人工衛星を打ち上げて、衛星コンステレーションを構築、「スターリンク」を展開
低軌道の衛星コンステレーションを使って、世界中で利用可能な宇宙通信サービス「スターリンク」を提供しています。スターリンクは、地上の通信インフラが未整備な地域でも、専用アンテナさえあれば衛星経由でインターネット接続を可能にします。
日本でも利用可能ですが、中国、ロシア、イラン、北朝鮮など、国家安全保障上の理由から利用を禁止・制限している国もあります。
従来から高軌道(高度3万6,000キロ)の静止軌道を使った通信サービスはありますが、高軌道ゆえに通信遅延の問題があります。また、静止軌道は赤道上にあるため、緯度の高い国では仰角(衛星電波が地上に向かってくる角度)が低くなり、ビルや山影では電波が届かないことがあります。
スターリンクを契約して専用のアンテナを持てば、高いビルや山に囲まれていても、上空があいていれば、どこでも低遅延の通信サービスが可能です。
平和利用を前提としていますが、その利便性ゆえに戦争地域での通信サービスや攻撃用ドローン誘導に使われる可能性もあります。
スペースXは、AIデータセンターの開発にも着手しています。イーロン・マスク氏は、将来、宇宙にデータセンターを造る構想も持っています。宇宙線に耐える半導体開発など、超えなければならないハードルは高いものの、実現に向けて開発を続ける方針と考えられます。
スペースXが実現した「再利用ロケット」
「再利用ロケット」は、スペースXが実現した宇宙開発の歴史を塗り替える画期的な技術です。従来、ロケットは一度打ち上げれば使い捨てられるのが常識であり、数千億円規模の機体が毎回海に捨てられていました。
しかし、スペースXの主力ロケット「ファルコン9」は、打ち上げ後に第1段機体(高度100キロくらいまで上昇させて切り離す一段目ロケット)が自律的に地上や海上の無人ドローン船へ垂直着陸し、回収・再利用することを可能にしました。
この技術の最大の功績は、宇宙への輸送コストを劇的に下げたことです。機体を再利用することで、ロケットの製造コストを大幅に抑え、打ち上げ頻度を向上させました。
衛星軌道まで投入可能な再利用ロケットを高頻度で打ち上げることにおいて、スペースXに勝る企業は、現時点でありません。米国の他の宇宙企業や中国企業も再利用ロケットの開発を加速させていますが、スペースXの技術に追いつくのは容易ではありません。
現在、この再利用技術はスペースXの基盤となっており、スターリンク衛星の大量打ち上げや、有人宇宙船による国際宇宙ステーションへの輸送などを支えています。使い捨てから「航空機のような運用」へとパラダイムシフトを起こしたこの技術は、人類がより日常的に宇宙へアクセスするための不可欠な鍵となっています。
宇宙開発戦国時代へ、現時点では米国が圧倒的に強い
スペースXをはじめとして、宇宙産業で収益を伸ばす企業も出てきています。ただし、「宇宙産業」の大部分は今、国家予算を使って運営されています。今はまだ、人工衛星を使ったサービスの大部分が、無料(もしくは安価な)公共サービスとして提供されているからです。
その一例が、GPSサービスです。私たちもスマホやカーナビを活用し、自分がどこにいるかなどを知るために日常的に使っていますが、これは米国政府が運用するGPS衛星によるサービスです。現時点で、米国政府はGPSサービスを無料で世界中の国々に提供しています。
ただし、いつまでも米国のみに頼っているわけにいきません。日本では自前の測位衛星「みちびき」シリーズを打ち上げ、米国のGPS衛星を補完する役割を果たすようにしています。
宇宙開発では、米国が圧倒的に強く、次いで欧州、ロシア、中国が先行しています。宇宙開発は、防衛(軍需)産業との関連性が高いため、防衛・宇宙関係予算が大きい米国がもっとも優位です。
<海外政府の宇宙関係予算>
地球上では、領土、領海、海洋権益をめぐる世界各国の争いが絶えません。ウクライナ戦争、イラン戦争、台湾海峡問題などで、米国、ロシア、中国などの大国が勢力争いを続けています。
ところが、今のところ、宇宙をめぐる権益争いは起こっていません。ただし、宇宙産業の果たす役割がどんどん拡大するにつれ、将来、国家間で宇宙権益闘争が起こるのは避けられないと思われます。
現時点で、米国が圧倒的に強いですが、そこを中国が猛追しています。
日本の宇宙開発企業
日本は少ない宇宙予算の中でも積極的に宇宙開発を進め、成果を上げてきました。日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心とした宇宙開発に、民間企業が幅広く参画しています。日本製ロケットで打ち上げた、日本製の人工衛星「ひまわり」「みちびき」「だいち」などを運営しており、国際宇宙ステーション事業にも参画しています。
日本は、ロケット打ち上げで、スペースXに大きく出遅れています(日本だけでなく、世界中の国々がスペースXに対して劣後しています)。それでも、自前のロケットを打ち上げ自前の人工衛星を保有して運営しているという点で、日本は宇宙開発先進国(米国、欧州、中国、ロシアなど)の一角に入っています。
日本は、米国のように宇宙インフラを支配している国ではありませんが、それでも、ロケット部材、地球撮影用カメラ、衛星運営技術などで、世界でもトップクラスの技術を持つ企業はあります。
宇宙産業において、世界的に目立たないながらも、とても重要な役割を果たしています。
表は、宇宙産業で活躍している代表企業です。
<日本の宇宙開発の中核企業:2026年5月21日時点>
以下、簡単に解説します。
【1】造船重機3社(三菱重工、川崎重工、IHI)
この3社が日本のロケット打ち上げで中核的役割を果たしています。
三菱重工業(7011)は、宇宙開発で国内最大手企業です。日本の主力基幹ロケット「H3」をJAXAと共同開発し、製造や打ち上げまで行っています。
川崎重工業(7012)はH3ロケットのフェアリング(大気圏通過時に先端部分を保護する重要部材)の開発・製造を行っているほか、人工衛星・宇宙ロボットなどさまざまな宇宙機器の研究開発を行っています。
IHI(7013)は、H3ロケットなどのエンジンの開発・製造を行うほか、さまざまな宇宙機器を開発・製造しています。低軌道の衛星コンステレーションを運用する事業では、英国企業2社と提携しました。2030年までに地表の観測データを集めるネットワークをつくり日英間の安全保障協力に役立てる計画です。
【2】電機2社(三菱電機、NEC)
この2社が、日本の人工衛星の開発・製造で中核的役割を果たしています。
三菱電機(6503)は、人工衛星システムの開発、製造を行っています。気象衛星「ひまわり」シリーズ、GPS補強衛星「みちびき」などの開発、製造の実績があります。人工衛星に搭載される太陽電池パネル、アンテナ、通信中継器、バッテリーなど、さまざまなコンポーネントの開発・製造でも高い技術力を有します。
また、衛星を打ち上げた後、その軌道制御、コマンド送信、データ受信などを行う地上管制システムの設計、構築、運用支援も行っています。さらに、宇宙から得られたデータを活用したソリューション開発にも注力しています。
NEC(日本電気:6701)も人工衛星の開発・製造を行っています。特に、小型・高性能の地球観測衛星に強みを有します。衛星をコントロールする地上システムの構築にも強みを持ちます。
【3】NTT
NTT(9432)は、宇宙システムを利用した通信ネットワークを構築して、地上のネットワークが届きにくい山間部・海上や、災害時の通信を提供する計画を進めています。
【4】総合商社(三菱商事、三井物産)
三菱商事(8058)は、地球観測衛星データの活用事業に投資、参画し、農業、インフラ監視、防災などでのソリューション開発を進めています。また、宇宙ゴミ除去やロケット打ち上げなどに取り組む宇宙企業や、宇宙関連スタートアップへの投資、育成を行っています。
三井物産(8031)は、衛星通信サービス事業者への投資や自社の通信衛星を活用して、ブロードバンド通信、IoT通信、船舶、航空機向け通信などのサービスに対応しています。
スペースXは、今後、さらなる宇宙開発およびAIデータセンター開発を進めるでしょう。その効果で、世界各国の宇宙開発も加速するでしょう。宇宙開発企業に対する、株式市場の注目がさらに高まる可能性があると予想しています。
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