PlayStation®初の公式ラジオ番組として、2016年4月からレギュラー放送しているプレイステーション presents『ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ』(毎週木曜日 夜9時~)。寝食を忘れてゲームにのめり込むほどのゲーム好きで知られるライムスターの宇多丸と、ゲームをこよなく愛する著名人をゲストにお招きし、「人生におけるゲームとの出会い」や「あのゲームとの思い出」「今オススメのゲーム」など、ゲームについて楽しく熱く語り合うトーク番組です。
第229回:FIVE NEW OLD HIROSHIさん前編
HIROSHI少年、RPGの「回復」の概念がわからなかった
「マイゲーム・マイライフ」のゲストにFIVE NEW OLDのHIROSHIさんがやってきました。初めてやったRPGがポケモンだったというHIROSHIさん。まだ幼かったがゆえの、とんでもない勘違いがあったようです。
HIROSHI「家族はそんなにゲーム肯定派ではなかったんですよ。でもあんまり僕がやりたいやりたい言うから、最初ゲームボーイ。そのときはポケットって言って、グレーじゃなくて、色々なカラバリのある小っちゃいものだったんですけど、それを買ってもらったのが幼稚園の終わりか小学校のはじめくらい」宇多丸「
結構ゲーム機買ってもらう年齢としては、わりと早めですよね」HIROSHI「なんか結構もう、僕らの世代になると持ってるのが当たり前で」宇多丸「ポケモンですかね?」HIROSHI「そう、ポケモンが始まったときくらいに小学校に入学しているので、ビッグウェーブが来てて、ここに乗れない奴は(笑)」宇多丸「単なるゲーム機というよりは、だから僕らの、昔の世代で言う、メンコとかじゃないけど、そういうものですよね。それを通じてコミュニケーションするし遊ぶしだから、ないと話にならないみたいな」HIROSHI「なんかもう、遊ぶところに、外で遊ぶとはまた別の選択肢でゲームしに遊びに行くというのが当たり前にあったというか」宇多丸「その世代の親御さんね、両親世代からすれば眉をひそめる現象だけどね(笑)。ゲームがないと仲間はずれにされるなんて、なんて時代なのって感じだけど。まあまあでも、買ってもらったと、無事」HIROSHI「そうですね。そこで最初、ポケットモンスターの緑ですね。フシギバナかな? それが表紙のやつを買ってもらってそれで遊んでたんですけど」宇多丸「よかったですね。無事にね」HIROSHI「だけど、当時RPGってやったのがポケモンが初めてで、概念がわからなかったんですよ」
宇多丸「やっぱり、ちょっと幼いよね? ちょっとそこを理解するにはね」HIROSHI「ちょっと難しくて。押し引きがあるじゃないですか。
やられそうになったら回復しなくちゃいけないとか。でもドンキーとかマリオだと、とりあえず戦っとけば前に進めばなんとかなったんで」宇多丸「そっか、(押し引きの)“引く”があるから、ポケモンは」HIROSHI「そうなんですよ。それがわからなくて。緑、全然クリアできなかったんですよ」宇多丸「うんうん」HIROSHI「で、当時は、ソフトのせいだと思って(笑)」宇多丸「壊れてるこれ、みたいな」HIROSHI「で、赤を買ってもらったんですよ」宇多丸「ははは! 緑が悪いと。ははははは!」HIROSHI「緑が俺に合わん、って」宇多丸「赤買ってもらった(笑)」HIROSHI「で、個体依存していると思っていたんで、もう一台、赤いゲームボーイを買ってもらって」宇多丸「あ、あ、ハードそのもの? うーわ、マジか!(笑) 幼い上に、親御さんも理屈がわかっていないから」HIROSHI「親もゲームよくわからないから。じゃああんたテスト頑張ったらもう一台買ってあげるよって。どっちもよくわかってないから(笑)」宇多丸「ははははは! むっちゃ無駄!(笑)」HIROSHI「スキルの問題なのに」
宇多丸「(中略)これ無駄じゃんってわかったのはいつなんですか?」HIROSHI「結構後で、3年くらいたって、ドラクエのモンスターズっていう、ポケモンのドラクエ版みたいなのをやってたんですけど、そのときになんとなく理解もできるようになって。……あれ? これ、俺のせいだったんじゃない……? 俺がわかってないだけで……」宇多丸「はははははは!」HIROSHI「だから、いまだにアクションのほうが好きなんですよ」宇多丸「そっか。RPGに苦い思い出があるから(笑)。ははははは」これは面白いエピソードです。でも、ゲームボーイが二台と、ポケモンの赤と緑の両方を所有することで、はからずもケーブル通
信が一人でできてしまう状況になったのは羨ましい限り……。ポケモンには赤のソフトと緑のソフトで、それぞれ片方にしか出てこないモンスターがいるので、図鑑をコンプリートするには別の色のソフトを持っている人と通信交換しなければならなかったのです。
これがね、当時は女性でゲームをする人が少なかったものですから、通信してくれる人を見つけるのが本っっっっ当に大変だったんですよ……。あまつさえ、私はそのとき中学一年生という思春期まっさかりなお年頃。つい数ヶ月前まで小学校の校庭をともに駆け回っていた
男子どもは学ランを着た途端に色気づき、急に誰も口をきいてくれやしなくなった頃合いでした。そのため、通信相手は女子の友達から探し出すしかなかったわけです。当時私が喉から手が出るほど憧れていた二台持ち&ソフト二色持ち。それをHIROSHIさんは実現させていたというのに、悲しいかな幼い頭では理解が追い付いておらずそもそものクリアができないという……。人生うまくいかないものです。
今回のピックアップ・フレーズ
HIROSHI「二番目に好きなものを仕事にしたっていうような感じなんですよ」宇多丸「え、それはだから音楽は二番目(笑)」 HIROSHI「一番はゲームで二番目は音楽」文/朝井麻由美(ライター、コラムニスト)