「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)「現場にアタック」

今週のTBSは「SDGs」に関する取り組みに注目しています。

SDGsとして、国連は「持続可能な開発目標」として17項目、掲げていますが、その中には「4.質の高い教育をみんなに」そして「10.人や国の不平等をなくそう」というものがあります。

ところが、今の日本は、この2つが遅れているようです。

外国にルーツを持つ子が通うフリースクール

外国にルーツを持つ子のためのフリースクール「たぶんかフリースクール」を運営する、NPO法人 多文化共生センター東京の枦木典子(はぜき・のりこ)さんに伺いました。

「外国にルーツを持つ子供たちというのは、日本の学校教育に入っていくというのは非常に難しい状況があります。特に自分の国で、中学校までを卒業してきた人たちというのは、日本の中学校には、もう既卒なので、既に卒業しているので入れないんです。では高校に入れるかっていうと、まだ日本語が十分にできていない中で、高校入試はほとんどすべて日本語での入試ですので、入っていくことは難しい。その間にあって、学ぶ場所がどこにもないという、そういう状況がずっと続いていまして、このたぶんかフリースクールというのは、そういう子供たちのための学ぶ場所です。」

(NPO法人 多文化共生センター東京 枦木典子さん)

外国にルーツがある子が高校に行きたくても、現実的に、かなり困難な状況だそうです。

中学を出て来日すると、日本の中学には入れません。

では高校に入れるかというと、それも難しい状況です。というのも、高校入試の問題を解けるほどの日本語力がないからです。

そこで枦木さんたちは、2005年から、フリースクールを運営。現在、荒川と杉並に教室があり、週4日、毎日5時間、日本語、数学、英語が学べます。月3万5千円の月謝はかかりますが、交通費などでは、企業の支援も取り入れられないかと、工夫、努力しているそうです。

学校に入るのにこんなに大変だと思わなかった

荒川の教室を見学してきましたが、みんな楽しそうでした。ネパールから去年来日したという16歳の女の子は・・

「今16歳です。

ネパールで去年の11月に来ました」

(楽しいですか?)

「楽しいです。勉強と、友達と、先生も優しいですから、楽しいです。」

ただ、中国から来たという17歳の女の子からは、日本で苦しんでいたことも伺えました。

「17歳、中国から、去年の3月に日本に来ました。」

(この学校にはいつから通ってるんですか?)

「今年の4月。」

(来日してから、ここに入るまで時間かかりました?)

「ちょっと時間かかりました。」

(そのときどういう気持ちでした?)

「高校、入るの、ちょっと心配。」

(日本に来るときに勉強するところがないって思いました?)

「考えてなかった…」

(すぐ学校に入れると思いました?)

「はい。そうです。でもちょっと…難しく…」

(今はお父さんも喜んでます?)

「はい。」

(見つかってよかったね、ここが)

「はい、はいはい!」

▼給食の時間にお邪魔しました。多国籍の生徒たちが学んでいます

外国にルーツを持つ子の教育、日本に足りないものの画像はこちら >>

▼教科書「語学留学生のための日本語」でお勉強

外国にルーツを持つ子の教育、日本に足りないもの

▼学校の教科書の用語がわからないことも多いので、多文化共生センター東京では、独自に用語解説集を作っています

外国にルーツを持つ子の教育、日本に足りないもの

▼用語集では、「正の数」などの数学用語を丁寧に解説しています

外国にルーツを持つ子の教育、日本に足りないもの

どちらも、父親の仕事の関係で、中学を卒業してから来日。

中国からの子は、1年間、どうしていいか分からず、1人で家で日本語を勉強していましたが、やはり高校受験では受からなかったそうです。そこで、エンジニアの父の友人が、このフリースクールを教えてくれて、今、ようやく、日本語を学び直している状況です。

このように、外国から来ると、情報の面でもハンデがあります。受験といっても、外国にルーツのある子の受け入れ体制が整っているところと、そうでないところがあり、例えば、受験科目が日本語、英語、数学の3科目で良いところもあるようで、このスクールでは、そうした情報も、アドバイスしているということでした。

こうした支援によって、去年の高校受験では30人中30人が合格できたということでした。

子供の学ぶ権利を保証する体制づくりを

これ自体はとても良いことですが、ただ、外国にルーツがある子供の多くは、 取り残されているとして、枦木さんは、国の対応を訴えていました。

「国も、外国からの働く人を受け入れていくということを施策として始めていますけれども、この先、外国から来て頂くとしたら、あそこより他の国の方が安心できるねっていうのではなく、やはり子供の安心して学べる国だなっていうことを作っていくことが大事だなというふうに思っています。多くの子供たちは、日本語も勉強して、自分の国の言葉も話せて、すごく様々な可能性を持っている若い人たちなんですね。それは、日本の社会にとっても、すごく豊かな未来を一緒に作っていくっていう、そういうもとになっていることだと思いますので、ぜひ早急に体制を作って頂きたいというふうに思っています。」

(NPO法人 多文化共生センター東京 枦木典子さん)

こちらのスクールとしては、高校合格に結びつける活動ができていますが、 こうしたところは、まだまだ少なく、 ここには、神奈川、千葉、埼玉からも通ってくる子がいるそうです。

外国籍の子は、高校生にあたる15~18歳が全国に5万5千人。小中高の年齢にあたる子で見れば、全国に19万人も。NPOの活動は大切ですが、限界もあり、 やはり、「国や自治体としての支援体制を」と訴えていました。