夏休みも終盤ですが、海外からの観光客の姿をよく見かけます。

ただこの暑さもあって、滞在中に病気や怪我をする人もいて、今、こうした外国人で医療機関にかかる方が増えているようです。

訪日外国人の医療相談が増えている

まずは、全国の医療機関と連携し、夜間・休日の診療を手掛ける会社「ファストドクター」に、訪日外国人の相談はどれぐらい増えているのか、伺いました。

「ファストドクター」インバウンド担当 イェンさん

かなり増えていますね。去年は12月の際にまだ2件しかなくて、いま、7月の1ヶ月分で58件もありまして、かなり増えてきました。

現時点は、オペレーターさんは20名ほどがいまして、中国語、英語、韓国語、ほかにベトナム語、ポルトガル語、ロシア語、タイ語も対応できます。

だいたいグーグルで検索して、ホームページを見つけて、救急往診の依頼が入ります。

やっぱり「発熱」ですね。コロナと、インフルエンザも流行っていたので、一番多いのが発熱(の相談)です。

中でも、コロナやインフルエンザの陽性者も増えているようです。

ファストドクターでは、昨年12月からインバウンドの相談を始め、今月から、外国語を話すオペレーターを20人に倍増したそうです。

例えば、旅行中に具合が悪くなった場合、旅行者はファストドクターに問い合わせると、オペレーターから病状の聞き取りが行われます。そして、その内容が医師に共有されて、往診が必要な場合は、夜間休日問わず、ホテルまで駆け付けてくれるという流れです。

自由診療なので、診察料や交通費などもろもろ込みで、一律「8万8千円」。事前に海外旅行保険をかけている人は、帰国後、手続きした上で、返金対応も可能だそうです。

「目眩」の表現方法も、文化によって違う

では、実際に、現場ではどんなやり取りがあるのか。ファストドクターと提携している医師のお一人、川崎市の吉井 康裕さんに伺いました。

医師 吉井 康裕さん

まずお話を聞いてから診察して、それにあった薬を出していきますね、みたいな感じ。

スペインの人とかだったらお互い片言英語になっちゃうけど、グーグル翻訳とかいろいろ駆使しながら、お互い進めていく感じでやっています。

細かい表現はなかなか難しいので、例えば「目眩がする」って言っても、ふわふわする感じなのか、ぐるぐる壁が回ってるような感じなのか、文化というか、生活の過程によって、痛みの訴え方も変わってくる。大げさに言うのか、耐えるべきなのか。

コミュニケーションで、誤解とか、誤診に繋がるのはもったいないんで、そこら辺は慎重にやってます。

吉井さんは、アメリカ海軍の基地「横須賀 米海軍病院」に勤めていたこともあって、自ら英語でコミュニケーション。オーストラリア、スペイン、ロシアなど、様々な方を、対応してきたそうです。

ただ、説明ひとつとっても、簡単にはいきません。

例えば、「耳が痛い」と訴えていたスペインの女性がいたそうですが、「耳管(じかん)」という、耳の中の管の調子が悪いということで、痛み止めを処方したそうです。

でも、「耳管」ってどこだか、ピンと来ますか?これが何なのかということを、グーグルで検索したり、イラストで示したりして、説明に苦労したそうです。

また、考えてみれば、異国で病気になるのは不安です。

そんな中、吉井医師は、スマイル、アイコンタクト、ボディータッチを意識し、また小さなところですが、ファーストネームを、1回の診察で5回以上呼んで安心感を与えたり、患者さんの不安を少しでも払しょくするために、丁寧に対応していると話していました。

対応は避けられない

今後、こうしたケースはもっと増えそうですが、医師が駆け付ける在宅診療のほかに、街のクリニックにも外国人の姿が増えているようです。

コロナの発熱外来も実施する、東京北区にある「いとう王子神谷内科外科クリニック」の院長、伊藤 博道さんのお話です。

「いとう王子神谷内科外科クリニック」院長 伊藤 博道さん

いわゆるツアーとかで来てる人が(診察に)来るというよりも、元々住んでる中国籍の方がいて、家族が遊びに来るような旅行。そういうパターンも結構多いですよね、我々のところ。

言葉が全然わからないのに来る人もいますからね。

言葉が全然わかんないのに来て、翻訳機みたいなやすで突き出されたときに、一番絶望感を感じますね。「いや、これは大変だな」と思ってですね。

誤変換もあったりして、全部それでやるとなると、相当な労力を使ってしまいますので、ちょっと気が滅入ってしまいますけどもね。

でも、そういうものに対応しなければいけない社会になってきているなとは思いますけどね、発熱外来対応も。

中国人の一大コミュニティがある埼玉県川口市が近いこともあって、こちらの北区の病院には、日本在住の中国人や、旅行者が多いようです。

日々の対応の苦労を教えていただきましたが、医療行為に間違いがあってはならない為、普段以上に、密にコミュニケーションをとる必要がある…。

それ故の悩みでした。

さらに、もともと大変な中で、さらにコロナの影響も出てきているようで、こちらの病院では発熱外来が込み始めていて大変ということでした。

インバウンドで呼び込むだけでなく、医療含め、受け入れる態勢も整備が必要です。