TBSラジオ『井上貴博 土曜日の「あ」』毎週土曜13時から放送中!

10月14日(土)放送後記

ゲストコーナー「あの人」には、去年12月にご出演依頼、2度目の出演!「ニッセイ基礎研究所」の研究員、廣瀨涼さんに現代の消費文化について話を聞きました。

UFOキャッチャーの話

Z世代は…ディズニーで買ったカチューシャをその場でメルカリに...の画像はこちら >>

井上「今日は『あの消費満足でした』というメッセージテーマで皆さんからメッセージ頂いてます」

田中「ロブマチャコさんのメールです。「私が満足した商品はUFOキャッチャーです。

帰り道にあるゲームセンター、好きなキャラのぬいぐるみを見つけるとトータルで2000円は使っていると思いますが、達成感は残るし、好きなキャラクターのぬいぐるみも残って大満足です。私の抱き枕になってくれています。ただ買うよりも満ち足りるUFOキャッチャーは満足消費の1つです」ということなんですが…」

井上「これちょっと不思議なんですけど…コロナ禍でよりUFOキャッチャーの人気が上がったじゃないですか?この消費文化って何なんですか?」

廣瀬「僕の中でも面白い事例だなって思っていて…私達の消費自体が今すごく現在志向になっている。未来のことを考えるというよりかは、今の欲求を満たしていきたいっていうような考え方」

井上「ですね」

廣瀬「日々やりたくない仕事でストレス抱えてるしとか、今日頑張った自分をねぎらってあげたいなっていう形で、昔はこんな金額出さなかったなっていう高めのスイーツだったりを「今日頑張ったし買っちゃおうか!」ってのが連続で続いたりとか、スターバックスも何百円もするドリンクを一杯普通に買ってしまったりだとか」

田中「うんうん」

廣瀬「今や500円1000円が普通になっているガチャガチャとかも普通にやってしまったりだとか…ゲームゲームセンターで何千円も消費してしまうっていうのは、周りから見たらすごく非合理的な消費なんですけれども、ブランド品を買うとか、車を買うとか、海外に行くっていうような金額よりかは、まとまったお金が必要無いわけです」

井上「そうですね」

廣瀬「その中で消費をすることで、明日への活力になったりとか、自分のねぎらうことに繋がるっていう消費ってかなり多くて。その典型が、推し活みたいなもの」

井上「推し活と同じ土俵になるんですか?!」

廣瀬「なると思います。推し活みたいに精神的充足に繋げている人たちとこのUFOキャッチャーなんかも楽しかったってストレス発散する気分になったりとかって最終的にその手に入ったっていう満足感だとか、自分自身を満たしてくれる消費になっていて、それによって満足感が明日以降の活力になるって考えたら、性質は同じかなって思いますね」

井上「ある意味合理的では無い気もしちゃうんですよ。欲しいものがあるんだったら買った方がもしかしたら安く済むかもしれないし、でも何回も何回もやって、ようやく取れた喜びはあってもちょっと出費がかさむかもしれないし、ガチャガチャだって何が出てくるか分からないし。不確実性が逆転するんだって…」

廣瀬「お金を使いたいんでしょうねってのがあります。そういう中でドキドキ感も味わえるし、満足感も得られる、だったらその目的のものを所有するっていう以外の付加価値の部分もやはり必然的についてくるっていうまとめてセットで、取れない時は取れないしっていうのを分かった上でやるからこそ面白い」

井上「そこはエンタメで」

廣瀬「エンタメゲームでもあると」

田中「井上さん超コスパ人間じゃないですか?UFOキャッチャーなんてしないですよね?」

井上「UFOキャッチャーは…高校生以来してないんじゃないですかね」

田中「超合理的人間の井上さんからするとUFOキャッチャーやってる人って何でだろうって?」

井上「いや不思議ですよ!だからコロナ禍で遠隔のUFOキャッチャーがものすごい流行ったのが、もうとても不思議だったんです!なぜ皆さんこんなに不合理なことを…なぜだろう…って思いました」

ディズニーのカチューシャを入園早々売る若者

Z世代は…ディズニーで買ったカチューシャをその場でメルカリに出品?!

井上「廣瀬さんの著書『タイパの経済学』、読ませて頂きました」

廣瀬「我々の身近な消費を深掘りしていくと「こういうことが言えるよね?」って明示して、そこから読者の皆さんに「あるある!」感じてもらいたいなっていうことを詰め込んだ感じです」

井上「無意識でやっていることを言語化してもらっているので反芻することができる本ですよね。本の中に「コンテンツを見て自分がどう感じるか」が主軸だったのに、いつしか「コンテンツを消費すること」が目的になって。コンテンツを見て感動したとかじゃなくて、コンテンツを見たことでコミュニケーションの手段になってるって書かれていて。「あぁ…だから自分は無意識で1.5倍速で見てるんだなぁ」って思いました」

廣瀬「昔で言うと学校で「あの番組見た?」みたいなのが前提でコミュニケーション取れていたの普通だったんですが、今は各々が見てる媒体が違うからこそ、所属しているコミュニティによって準備しておかないといけない。それぞれのコミュニティに合わせてコンテンツを消費してネタを持っておかないといけないのは…しょうがないかなって思いますね」

井上「それだけコスパ・タイパを考えると「自分は有効的に生きているんだろうか」と考えると…そんな気もしないし…何でこんなに無意識にコスパとかタイパを考えてるんだろうなって」

廣瀬「やっぱ様々なもの、除法が溢れすぎちゃっているのが大きいかなと。

そのせいでノルマ化ですよね。誰も義務付けていないのにノルマとして消費しないといけないものが多すぎちゃて。それこそ無料でマンガが毎日1話読み放題だったりとか、ゲームのログインだったり、毎週更新されるドラマや映画だったりとか…楽しむというよりかは「次のが来ちゃうからやっておかなきゃ!」「無料で読めるのを損しちゃうから読まなきゃ!」とかっていう義務感・ノルマ感の方が強くなっちゃってるのが要因かな」

田中「それは本当に楽しめているのかどうかって疑問ですよね」

廣瀬「そうですよね。そこについての私論をこの本で書かせて頂いています」

田中「本の中で…若い子たちが、ディズニーランドに行ったらまずすることで、カチューシャを皆買うじゃないですか?それを買ってすぐに写真に撮って、メルカリに出品する人がいるんですか??」

廣瀬「極端な例ですけれども…いるみたいですね。それが悪いかどうかは別として…かなり合理的だと思いません?」

井上「そこなんですよ!めちゃめちゃ合理的だと思います!その手があったか!って」

廣瀬「結局、次行く仲間とまた同じようなものを買うんだったら、リリースしちゃってっていうのはかなり合理的かなと」

田中「うん」

廣瀬「その場で買ってその場で出品してるから極端な例に思えるかもしれないけども、それこそ本1つとっても読み終わったらすぐにメルカリに出てるみたいなことも現状ですし、我々自体も自身もそれをやってる。しかも買う側としてもそれを期待してるのかもしんないですよね」

井上「所有することのデメリットをとても感じませんか?私30代後半ですけど、この世代でももう感じるので。でも、ちょっと上の世代なら「就職していい車持つ」「いい時計を買う」それがかっこいいなって羨望の眼差し自分自身を見てたはずなのに、今は逆に「いらないな」「所有するリスク高いな」そう思っちゃうんですよ」

廣瀬「結局これだけ興味が溢れていると他の趣味にスイッチする、こう変えたいなって思う時の衝動も大きくなってくるわけですよね。前の趣味にたくさんつぎ込んでたくさん目の前に物が積んであったら「これこんだけ買ったのにな」っていうふうになって。なかなかスイッチしにくいっていうのもある」

田中「悲しいですけどねぇ」

井上「悲しいのかな?流行の移り変わりも早いし合理的だと思うんだけどね…」

廣瀬「それを市場がサポートしてくれてるんですよね。サブスクにしてもそうですし、リースにしてもそうです」

井上「これは加速していきますか?それともどっかでまた揺り戻しがありますか?

廣瀬「僕の私論ですけれども、加速していくかな」

井上「加速していくんだ」

廣瀬「これ以上にやはり情報は増えていきますので、処理していくものも増えていくし、やはり情報が多いってことは、興味を持つ対象も多くて欲しいと思う瞬間も多くなってくるわけですね。それでも悲しいことに、お給料が増えているわけではないので、使える収入には限度があると。だからその使える限度の中で自分の欲求を全部満たしていくってなると「必ずしも所有しなくていいよね「っていうのが多分今の現代消費者の考え方なのかなと思います」

廣瀬さんはディズニー好きだった

Z世代は…ディズニーで買ったカチューシャをその場でメルカリに出品?!

田中「オタク文化の研究されている廣瀬さん。

ご自身も何か推しがいたりとか、オタクなんですか?」

廣瀬「私自身はもうディズニーがめちゃくちゃ好き。もう「ディズニーのために生きてる!」みたいなところはありますね」

井上「きっかけなんですか?」

廣瀬「幼少期からディズニーのビデオだけ見させられてたみたいな。英才教育的なところも」

井上「親御さんがお好き?」

廣瀬「はい、好きでしたね。なんか海外コンプレックスみたいなのもあったみたいで、日本のコンテンツは見せない!みたいな感じで、海外のコンテンツに溢れてるような幼少期を送ってましたね」

井上「どのくらい行くんですかディズニー」

廣瀬「外国のディズニーに年に3回。カリフォルニアとかフロリダとか香港とか」

井上「いいですね!結婚式とかは?」

廣瀬「できたらディズニーでやりたいなと…」

田中「もしかしてカチューシャ売ってるのって廣瀬さん?」

廣瀬「違います違います!」

田中 (笑)

井上「ディズニー好きという話は、人としての廣瀬さんが浮かび上がった気がします!」

廣瀬さんは、先月、『タイパの経済学』(幻冬舎)から発売。Z世代を中心とした若者は、なぜ“タイパ”を重視するのか?なぜ、異常なまでに時間に囚われるのかを論じた本。気になる方は是非!来週もお楽しみに!

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