受精とは精液中の最も元気のよい1匹の精子が卵子への侵入に成功すること。それが「X精子」なのか「Y精子」なのかで男の子が生まれるか、女の子が生まれるかが決定する。
しかし、その医学的理論を絶対に理解しようとしない人々が世界にはまだ大勢いる。このほどインドのある村で夫を含む義理の家族から暴行を受けた30代の女性。男児が産まれないからという女性の側にはなんら非のない理不尽な理由からであった。女の子に幸せな人生などあるのか、娘を持つことは一家にとって幸せなのかなどと言われるインドやパキスタンの貧しい家庭。古き時代から伝わる結婚時の「持参金」もおおいに彼らを苦しめているようだ。

「なぜ女の子など産んだのか! 男の子がよかったのに!」

そんな言葉で怒鳴りつけながらホッケーのスティックで嫁を強く叩く男たち。
夫を含む義理の家族の暴言暴力に女性は体も心もボロボロに傷つけられていた。彼女はミーナ・カシャップさん(35)。インド・パンジャーブ州のパティヤーラーという村で起きた忌々しい家庭内暴力事件の話題を『Hindustan Times』ほかが伝えている。

警察にこの暴行事件を訴えたのはミーナさんの実家の家族で、今年4月の出来事が最近になって発覚したもよう。これにより逮捕・起訴されたのはミーナさんの夫のダルジート・シン、その兄のカマルジート、そして友人であるガウラヴの計3名。彼らは男児を授からない腹立たしさに加え、そもそも嫁入り時のダウリー(Dowry:結婚持参金)が少なかったと怒鳴りつけたという。


ダウリーとは女性側が嫁入り時に用意するもので、インドの悪しき風習のひとつだ。夫やその家族は受け取ったダウリーで宝飾品、車、家電製品、出産準備品などを購入する。当然ながらダウリーの額で夫側の機嫌やその後の嫁の扱いが変わってしまうため、年頃の娘を持つ親にとっては大きな苦悩の種とされてきた。また持参金を用意できないほど貧しい家庭では、誕生した赤ちゃんが女の子だと「不幸の種」などと言われて実の親に殺されてしまったり非常に幼い年齢で嫁に出されてしまう例もある。

夫のダルジートとは2年前に結婚していたミーナさん。彼女の実家は要求された通り70万ルピー(約122万円)の持参金をシン家に渡していた。
この理不尽な持参金制度は1961年には法的に禁止されたが、昔ながらの封建的な村では実は今なお残っている。娘を持つ家庭の側が「行き遅れの娘がいるのは恥ずかしい。早く嫁にもらってほしい」「出戻り娘は恥ずかしい。仮に夫と死別しても離婚してもそこで暮らせるように」といった考えに縛られていることもダウリー問題がなくならない一因であるという。

インドの国家犯罪統計局によれば毎年約8,000人がこの持参金を理由に殺害されているといい、虐待の被害者は毎年約1万人。報告されない被害件数も多々あると見られ、特にインドの貧困地域に関しては世界の人権活動団体が監視の目を光らせている。


画像は『Metro 2017年7月17日付「Woman ‘beaten by in-laws with a hockey stick for giving birth to a girl’」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)